サン・バルトロ

サン・バルトロの祭祀センター

サン・バルトロ（San Bartolo）は、グアテマラ北部のペテン低地に位置するマヤ文明の祭祀センターであり、先古典期後期を代表する重要な遺跡です。この場所は、ティカルから北東に約80kmの距離にあり、「ラス・ピントゥラス」と呼ばれる絵画の神殿の素晴らしい壁画によって知名度を得ています。

発見と調査

この遺跡は、2001年にピーボディ考古学・民族学博物館のウィリアム・サターノの指揮する調査隊によって調査が行われ、以降も続けられている発掘により、多くの発見がなされています。特に、2003年に壁画が放射性炭素年代測定を受け、紀元前100年のものであることが明らかになり、これがマヤ文明の壁画の中で最古とされています。特に北壁と西壁の壁画は、マヤ文化の創世神話や宇宙観の表現を含む重要な資料となっています。

建築と遺構

サン・バルトロは、中心部に100基以上の建造物があり、特に「ベンタナス」と「ピントゥラス」の二つのグループを中心に広がっています。これらのグループ内には、神殿や居住区が配置されており、遺構の分布から当時の人々の生活や儀式の様子を考察する上で重要な情報を提供しています。

2003年には、ラス・ベンタナス神殿や、周辺のハバリ複合に関連する建物も確認され、どのようにマヤ社会が構築されていたのかが見えてきました。特にハバリ複合は、独特の構造を持ち、階段や部屋が巧妙に配置されている点が注目されています。

壁画の内容

サン・バルトロの壁画は、政治的・宗教的な側面を持ち、「ピントゥラス」下層1号神殿の北壁と西壁に描かれた場面は、特に重要です。

北壁の描写

北壁の壁画では、マヤのトウモロコシの神が描かれており、神話的なシーンが繰り広げられています。人物たちは、巨大な蛇の上を移動したり、ひざまずいたりしており、宇宙観を象徴する意義深い場面です。注目すべきは、カラバッシュの木の周りに配置された四人の赤ん坊の姿で、これは豊穣や再生を象徴していると解釈されています。

西壁の描写

西壁の描画では、様々な供物が描かれ、神聖な儀式の一部が表現されています。多くの人物が描かれ、彼らは血を流しながら神に奉納するシーンが展開されています。この血を捧げる儀式は、古典期のマヤでも見られる重要な文化的行為であることが示唆されています。

サターノらは、これらの壁画が実際の歴史的行事や神話と密接に関連していると考えており、祭祀における王権の正当性が表現されていると指摘しています。具体的には、西壁に描かれたトウモロコシの神や王の即位の場面は、マヤ社会における権力や宇宙観を反映しているとされます。

サン・バルトロの重要性

サン・バルトロは、その美しい壁画や独自の建造物によって、文化や考え方の発展を理解する上で特に重要な遺跡といえます。この場所は、先古典期マヤの宇宙観の形成とその後の政治的・宗教的儀式の重要性を感じさせるものであり、考古学的調査を通じて、私たちの理解を深めるための貴重な手掛かりを提供しているのです。

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