サークルズ (ザ・フーの曲)

ザ・フー「サークルズ」：複雑な権利関係に翻弄された名曲

「サークルズ」（Circles）は、イギリスのロックバンド、ザ・フーが1966年に発表した楽曲です。ピート・タウンゼンドによって作詞・作曲され、彼の多重録音デモを基に制作されました。この曲は、ジョン・エントウィッスルが金管楽器を演奏したザ・フー初の楽曲としても知られています。

2つの録音バージョン

「サークルズ」には、2つの異なる録音バージョンが存在します。

1. ブランズウィック版（「インスタント・パーティ」）： 1966年1月12日と13日にシェル・タルミーのプロデュースで録音。シングル『リーガル・マター』のB面として発表。
2. リアクション版（「サークルズ」または「インスタント・パーティ」）： 1966年1月末にメンバー自身でプロデュースし再録音。『恋のピンチ・ヒッター』のB面に収録。

本稿では、便宜上、前者をブランズウィック版、後者をリアクション版と呼称し、リアクション版から発表までの経緯を解説します。

リアクション版の経緯

1965年12月、ザ・フーはデビューアルバム『マイ・ジェネレーション』を発表。その後、5作目のシングルとして「サークルズ」と「インスタント・パーティ・ミクスチャー」をレコーディングしますが、印税を巡ってタルミーと対立し、契約を破棄。リアクション・レコードへ移籍します。そして、自分達で「サークルズ」を再録音し、新曲「恋のピンチ・ヒッター」のB面として発表することに。

しかし、「サークルズ」の著作権を主張するタルミーが法的措置をちらつかせたため、「サークルズ」は「インスタント・パーティ」と改題されてリリースされました。ところが、タルミーは著作権侵害で訴えを起こし、裁判所は発売差し止め命令を下します。その結果、「恋のピンチ・ヒッター」は発売からわずか5日で店頭から姿を消すことになりました。

リアクション版は、その後、EP『レディ・ステディ・フー』に「サークルズ」として収録されました。アメリカでは、解散後の1987年に編集アルバム『トゥーズ・ミッシング』で初めて入手可能となりました。

ブランズウィック版の経緯

タルミーは、「恋のピンチ・ヒッター」の売り上げを妨害するため、ザ・フーに無断でシングル『リーガル・マター』をリリース。B面には、自身がプロデュースした「サークルズ」を「インスタント・パーティ」と改題して収録しました。

ブランズウィック版は、アメリカでデビューアルバム『ザ・フー・シングス・マイ・ジェネレーション』に「インスタント・パーティ」として収録されています。

参加ミュージシャン

ロジャー・ダルトリー（Roger Daltrey）：リード・ヴォーカル
ピート・タウンゼンド（Pete Townshend）：ギター、ヴォーカル
ジョン・エントウィッスル（John Entwistle）：ベース・ギター、フレンチ・ホルン、ヴォーカル
キース・ムーン（Keith Moon）：ドラムス

カバー

ザ・フルール・ド・リス（The Fleur de Lys）：シングル"Circles"（1966年）
セル（Cell）：シングル"Fall"（1992年）

このように、「サークルズ」は、2つのバージョンが存在し、複雑な権利関係に翻弄された楽曲です。しかし、その音楽的な魅力は色褪せることなく、現在も多くのファンに愛されています。

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