サーシャ・ドラクリッチ

サシャ・ドラクリッチ：韓国サッカー史に名を刻んだストライカー

サシャ・ドラクリッチは、1972年生まれのセルビア出身の元サッカー選手です。主にフォワードとして活躍し、韓国のKリーグでその名を轟かせました。セルビアのレッドスター・ベオグラードでキャリアをスタートさせた彼は、1995年に韓国の釜山大宇ロイヤルズに移籍。その後、水原三星ブルーウィングス、城南一和天馬とチームを渡り歩き、韓国で9シーズンにわたる長く輝かしいキャリアを築きました。韓国での登録名は「シャシャ」もしくは「サーシャ」でした。

Kリーグでの活躍と数々のタイトル

ドラクリッチは、韓国で圧倒的な成功を収めました。釜山大宇、水原三星、そして城南一和天馬で計6度のKリーグ優勝を経験し、まさに優勝請負人として活躍しました。彼の得点力とリーダーシップは、所属チームの勝利に大きく貢献しました。

チームでのタイトル獲得は以下の通りです。

釜山大宇ロイヤルズ
Kリーグ：1997年
韓国リーグカップ：1997年（アディダスカップ、プロスペックカップ）

水原三星ブルーウィングス
Kリーグ：1998年、1999年
韓国リーグカップ：1999年（アディダスカップ、大韓火災カップ）
韓国スーパーカップ：1999年

城南一和天馬
Kリーグ：2001年、2002年、2003年
* 韓国リーグカップ：2002年（アディダスカップ）

個人タイトルも獲得しており、1999年にはKリーグ得点王、1998年と1999年にはKリーグベストイレブンに選ばれています。

物議を醸した「神の手」ゴールとユーゴスラビア空爆への抗議

ドラクリッチは、その卓越したスキルだけでなく、数々の物議を醸す出来事でも知られています。

1999年、水原三星所属時の富川SK戦で決勝ゴールを決めた際、ユニフォームをめくり「NATO STOP ASSAIL」と記されたアンダーシャツを披露しました。これは当時行われていたNATOによるユーゴスラビア空爆への抗議でした。この行為は大きな論争を呼びました。

さらに、同年10月のKリーグチャンピオンシップ決勝では、延長戦で「神の手」と称されるゴールを決めました。左からのクロスをヘディングで合わせたように見えたこのゴールは、実際には左手でボールをゴールに押し込んだものでした。この行為は、ディエゴ・マラドーナの有名なハンドゴールを彷彿とさせ、韓国で大きな話題となりました。試合後のインタビューでドラクリッチはゴールの正当性を主張しましたが、この行為はサッカー界のみならず、世論からも批判を集めました。得点王とベストイレブンを受賞したにも関わらず、MVP受賞を逃す結果となりました。

韓国代表入りへの期待と帰化問題

城南一和天馬での活躍から、2002 FIFAワールドカップに向けた韓国代表入りが噂され、ドラクリッチ自身も帰化を検討していました。しかし、空港でフース・ヒディンク監督から代表招集がないことを告げられ、帰化は実現しませんでした。

短いJリーグ挑戦と韓国への復帰

2000年、ドラクリッチはJリーグの柏レイソルに移籍しました。しかし、開幕前に骨折が判明し、思うような活躍ができず、わずか2試合の出場に終わりました。その後、水原三星に復帰しましたが、すぐにチームを離れ、2001年に城南一和天馬に加入しました。

レジェンドとしての地位

サシャ・ドラクリッチは、韓国サッカーの歴史に大きな足跡を残した選手です。彼の卓越した得点力、そして物議を醸したエピソードは、韓国サッカーファンの記憶に長く刻み込まれるでしょう。Kリーグでの成功、そして数々のドラマは、彼の名を永遠に語り継がれる存在として確固たるものにしました。彼のキャリアは、単なるサッカー選手の物語を超え、時代背景や文化、そして人間の複雑さを織り交ぜた、より深遠な物語として語り継がれるべきでしょう。

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