サーベイランス

サーベイランス（Surveillance）とは

サーベイランスとは、広義には「調査監視」を意味する言葉です。特定の現象や状況を継続的に観察し、その変化や動向を把握する活動全般を指します。経済分野や感染症対策など、さまざまな分野で用いられていますが、共通する目的は、現状を正確に把握し、問題の早期発見や効果的な対策立案につなげることです。

経済におけるサーベイランス

経済分野におけるサーベイランスは、主に国家の経済活動や経済政策が適切に行われているかを監視する活動を指します。この監視は、国際通貨基金（IMF）や先進7ヶ国財務相会議といった第三者機関によって行われることが多いです。

具体的には、各国の経済指標や政策動向を分析し、経済の安定や持続可能な成長を促進するための勧告を行います。これにより、国際的な経済秩序を維持し、金融危機などのリスクを未然に防ぐことを目指しています。

感染症におけるサーベイランス

感染症分野におけるサーベイランスは、疾病の発生状況を継続的に調査・把握し、その情報を基に疾病の予防と管理を行うためのシステムです。このシステムは、国や自治体などの公的機関が中心となって運営されます。

アメリカ疾病予防管理センター（CDC）は、サーベイランスを「疾病の発生状況やその推移などを継続的に監視することにより、疾病対策の企画、実施、評価に必要なデータを系統的に収集、分析、解釈し、その結果を迅速に、かつ定期的に還元するものであり、疾病の予防と管理を目的として用いられるもの」と定義しています。

国際獣疫事務局（OIE）は、サーベイランスを「疾病対策を講じるために、ある集団において疾病の摘発を目的として継続的に行われる調査」と定義しています。

これらの定義からもわかるように、感染症サーベイランスは、単に疾病の発生状況を把握するだけでなく、そのデータを分析し、予防対策や治療方法の改善につなげることが重要です。

サーベイランスの目的

サーベイランスの主な目的は以下の通りです。

早期警戒: 異常な事態やリスクの兆候を早期に発見し、迅速な対応につなげる。
状況把握: 現状を正確に把握し、問題の規模や影響を評価する。
対策立案: 収集したデータに基づき、効果的な対策を立案する。
効果評価: 対策の効果を検証し、改善につなげる。
情報共有: 関係機関や一般市民に情報を共有し、協力を促す。

サーベイランスの種類

サーベイランスには、さまざまな種類がありますが、代表的なものとして以下のようなものがあります。

パッシブサーベイランス: 医療機関や研究機関などが、日常業務の中で得られた情報を報告するシステム。
アクティブサーベイランス: 調査員が積極的に情報を収集するシステム。
センチネルサーベイランス: 特定の地域や集団を対象に重点的に調査を行うシステム。

サーベイランスの重要性

現代社会は、グローバル化や技術革新によって、経済や感染症のリスクが複雑化しています。このような状況下において、サーベイランスは、社会の安定と人々の健康を守るために不可欠なシステムです。

サーベイランスによって得られた情報は、政策決定や医療現場の意思決定を支援し、より効果的な対策を講じるための基盤となります。また、情報の共有を通じて、社会全体の防災意識を高めることにもつながります。

関連用語

疫学: 疾病の発生や分布、原因を研究する学問。
監視: 特定の事象を継続的に観察すること。
モニタリング: 計画的な観察や測定を行い、状況を把握すること。

参考文献

高島郁夫、熊谷進編　『獣医公衆衛生学第3版』　文永堂出版　2004年　ISBN 4830031980

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