ザザンボ

映画『ザザンボ』：実在の事件を基にした問題作

1992年、渡辺文樹監督によって制作された映画『ザザンボ』は、福島県で実際に起きた中学生の自殺事件を題材とした作品である。この映画は、その衝撃的な内容と、制作・公開にまつわる数々の問題から、現在でも議論を呼ぶ問題作となっている。

事件の背景

映画のベースとなったのは、1976年12月に福島県田村郡三春町で起きた、要田中学校に通う知的障害を持つ中学生の自殺事件である。この少年は、遺書の中で「学校がこわい」と繰り返し書き記していた。事件の裏には、学校における金銭トラブルや、教師による少年への暴行、そして少年を取り巻く閉鎖的な農村社会の闇が潜んでいた。少年の死因をめぐっては、様々な憶測が飛び交い、家族による殺害説などもささやかれたが、警察は自殺と結論づけている。

映画『ザザンボ』の制作と公開

『ザザンボ』の制作は、松竹プロデューサー奥山和由の支援によって実現した。しかし、完成した映画は松竹による公開・配給を拒否される。その理由は、映画の中に天皇家の写真が飾られているシーンが含まれていたため。「天皇問題を扱わない」という当初の約束に反したとされたのだ。渡辺監督は、このシーンを旧態依然たるムラ社会の象徴として捉えており、削除を拒否。結果、松竹からフィルムを買い取り、自主配給・興行という異例の道を歩むこととなった。

映画の内容とテーマ

『ザザンボ』は、東北地方の農村を舞台に、知的障害を持つ中学生の自殺という衝撃的な事件を軸に物語が展開する。担任教師は少年の死の真相を追い求め、事件の裏に隠された農村社会の闇、少年の家庭環境、そして近親相姦という事実を突き止めていく。映画は、閉鎖的な地域社会における抑圧や偏見、そして個人が抱える苦悩を、リアルに描き出している。

制作過程における問題

映画の制作過程においても、問題が発生している。撮影前に監督が遺族に無断で、少年が土葬されていた墓を掘り起こし、死因を調べようとしていたことが、後に発覚した。この行為は大きな批判を呼び、遺族からの訴訟に発展した。

映画『ザザンボ』の評価と影響

『ザザンボ』は、その過激な内容と制作過程における問題から、様々な議論を呼んだ問題作である。しかし同時に、閉鎖的な農村社会の闇や、そこに生きる人々の苦悩を浮き彫りにした、社会派映画としても高く評価されている。この作品は、日本の地方社会の現実と、人々の心の闇を深くえぐり出すことで、観客に強い衝撃を与えた。

スタッフとキャスト

監督、製作、脚本、撮影：渡辺文樹
音楽：小山貢、五十嵐咲子
美術：中川光則、石橋弘幸
録音：鈴木法之、山田聖二、中村裕二
照明：久米成男

キャストには渡辺文樹自身も出演しているほか、秋山誠、小勝新、鈴木法之、森田まゆみ、成田珠巳、井上真樹夫らが名を連ねている。

まとめ

『ザザンボ』は、1976年の実在の事件を基に制作された、衝撃的な内容と数々の問題を抱えた問題作である。しかし、その過激な表現と社会派的な側面から、日本の地方社会の現実と、そこで生きる人々の複雑な感情を描いた貴重な作品として、現在でも記憶されている。その内容は、現代社会においても、改めて考えさせられる多くの問題提起を含んでいる。

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