ザ・コースターズ

ザ・コースターズ（The Coasters）は、1950年代後半のアメリカ音楽シーンにおいて、独特の存在感を放ったボーカル・グループです。彼らの音楽は、R&Bとロックンロールを融合させつつ、ユーモアとストーリーテリングに満ちた歌詞が大きな特徴でした。この個性的なサウンドの多くは、著名なソングライターチームであるジェリー・リーバーとマイク・ストーラーによって生み出されました。

グループのルーツは、1949年から活動していたザ・ロビンズに遡ります。ザ・ロビンズは1953年頃からリーバー＝ストーラーと協力し、ロサンゼルスを拠点に活動していました。その後、メンバーの再編成を経て、1955年10月12日にザ・コースターズとして正式に結成されました。結成時のオリジナルメンバーは、カール・ガードナー、ビリー・ガイ、ボビー・ナン、レオン・ヒューズのボーカリスト陣に加え、ギタリストのアドルフ・ジェイコブスでした（ジェイコブスは1959年にグループを離れています）。

ザ・コースターズとしての活動は、1956年にシングル「ダウン・イン・メキシコ」で始まりました。この楽曲は、リーバー＝ストーラーのプロデュースのもと制作され、R&Bシングルチャートで大きな成功を収めました。翌1957年には、彼らのキャリアにおける初期の代表曲となる両A面シングル「ヤング・ブラッド / サーチン」がリリースされます。これらの楽曲はポップ・チャートでも注目を集め、特に「サーチン」はグループにとって初のBillboard Hot 100のトップ10入りを果たすヒットとなりました。

その後、活動拠点をニューヨークに移したザ・コースターズは、さらに多くのヒット曲を世に送り出します。1958年に発表された「ヤケティ・ヤック」は、サックス奏者キング・カーティスの印象的なプレイも相まって、グループにとって唯一となる全米シングルチャート（ナショナル・チャート）での1位を獲得しました。続くシングル「チャーリー・ブラウン」も両チャートで2位となるなど、彼らの人気は不動のものとなりました。この時期には他にも「アロング・ケイム・ジョーンズ」「ポイズン・アイヴィー」「リトル・エジプト」といった、物語性の強い楽曲が次々とヒット。中でも「ポイズン・アイヴィー」は、後にローリング・ストーンズがカバーするなど、時代を超えて愛される楽曲となりました。

しかし、1960年代に入ると彼らの勢いにも陰りが見え始めます。1966年にコロムビア・レコードと契約するも、かつてのような大きなヒットを生み出すことは難しくなりました。時代の音楽性の変化やメンバーチェンジなども影響したと考えられます。

活動最盛期は短かったものの、ザ・コースターズがロックンロールとR&Bの歴史に与えた影響は計り知れません。彼らの革新的な楽曲スタイルとパフォーマンスは、多くのアーティストに影響を与えました。その功績は高く評価され、1987年にはロックの殿堂入りを果たしています。

後年もメンバーを変えながら活動は続けられ、2007年にはアトコ・レコード時代（1954年 - 1966年）のシングル音源を集めたコンピレーション・アルバム『There's A Riot Goin' On: The Coasters on Atco』がリリースされるなど、彼らの音楽は今なお多くのファンに聴き継がれています。

主なアルバム

スタジオ・アルバム

『恋の唄／ソロ・ムード』 - One by One（1960年、アトコ）
On Broadway（1972年、キング）

主なコンピレーション・アルバム

『コースターズ』 - The Coasters（1957年、アトコ）
『コースターズ・グレイテスト・ヒッツ』 - The Coasters' Greatest Hits（1959年、アトコ）
『コースト・アロング・ウィズ・ザ・コースターズ』 - Coast Along with the Coasters（1962年、アトコ）
『ザット・イズ・ロックンロール』 - Coast Along with the Coasters（1962年、クラリオン）
Their Greatest Recordings: The Early Years（1971年、アトコ）
Young Blood（1982年、アトランティック）

彼らが残したユーモラスで社会風刺も含まれる楽曲群は、ボーカル・グループの表現の可能性を広げ、その後のポピュラー音楽に確かな足跡を残しています。

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