ザ・ストリーツ

ザ・ストリーツ

ザ・ストリーツは、イギリス中部バーミンガム出身のミュージシャン、マイク・スキナーが主宰する音楽プロジェクトです。ヒップホップを基盤としながらも、英国の日常風景や心情をリアルかつユーモラスに描き出す独自のスタイルで知られています。

来歴

2002年、ザ・ストリーツはデビューアルバム『オリジナル・パイレート・マテリアル』（Original Pirate Material）を発表し、シーンに登場しました。当時、アメリカのアーティストが中心だった世界のヒップホップシーンにおいて、このアルバムは「英国ならではのヒップホップ」を提示するものとして、批評家やリスナーから大きな注目と称賛を集めました。マイク・スキナーの率直な歌詞と、ガレージや2ステップといった当時のUKアンダーグラウンドミュージックの影響を感じさせるトラックメイクは、瞬く間に多くのファンを獲得しました。

キャリア最大の成功を収めたのは、2004年にリリースされたセカンドアルバム『ア・グランド・ドント・カム・フォー・フリー』（A Grand Don't Come for Free）です。この作品では、一人の若者の日常における様々な出来事、例えば恋人の浮気や現金の紛失といったエピソードが、一枚のアルバムを通して物語形式で語られます。その優れたストーリーテリングと文学的な深みが絶賛され、全英アルバムチャートで初登場1位を獲得。全世界で300万枚を超えるセールスを記録するメガヒットとなりました。このアルバムに伴うワールドツアーの一環として、ザ・ストリーツは日本を訪れ、フジロック・フェスティバルに出演するなど、日本のファンにもその存在を強く印象付けました。

続く2006年には、サードアルバム『ザ･ハーディスト･ウェイ･トゥ・メイク・アン・イージー・リヴィング』（The Hardest Way to Make an Easy Living）を発表。このアルバムでは、名声を得た後の自身の経験や、セレブリティ文化に対する皮肉などが赤裸々に綴られており、これもまた全英チャートで1位を獲得しました。

その後も、2008年に『エヴリシング・イズ・ ボロウド』（Everything Is Borrowed）、2011年にはミックステープ『Cyberspace and Reds』とアルバム『コンピューターズ・アンド・ブルース』（Computers and Blues）を立て続けにリリースし、コンスタントに作品を発表しました。

しかし、『コンピューターズ・アンド・ブルース』を最後に、ザ・ストリーツとしての活動は一旦休止期間に入ります。マイク・スキナーはこの期間、バンドThe MusicのRob Harveyと共に新プロジェクト「The D.O.T.」を結成し、新たな音楽性を追求しました。The D.O.T.として2012年と2013年にそれぞれアルバムを発表し、2013年には日本公演も行いました。

数年の沈黙を経て、2017年にザ・ストリーツとして久々の新曲を発表し、ファンを喜ばせました。そして2018年には、約7年ぶりとなる本格的なツアーを敢行し、プロジェクトとしての活動を本格的に再開しました。活動再開後、2020年7月には約9年ぶりとなる新作として、ミックステープ『None Of Us Are Getting Out Of This Life Alive』をリリースするなど、再び精力的に活動しています。

評価と影響

ザ・ストリーツの音楽は、マイク・スキナーの機知に富んだ、時に皮肉めいた、しかし常に人間味あふれる歌詞と、ヒップホップの枠にとらわれない多様なサウンドプロダクションが高く評価されています。デビュー当初はその革新性から「英国のエミネム」と評されることもありましたが、唯一無二のスタイルを確立しました。

英国を代表するラッパーへと成長すると同時に、マイク・スキナーは自身のレーベルを運営したり、後進のミュージシャンのプロデュースを手がけたりするなど、英国のストリートミュージックシーンをリードする存在としても広く認知されています。彼の音楽と思想は、多くの若いアーティストに影響を与えています。

また、ヒップホップというジャンルでありながら、同時期に活躍したハード・ファイ、ジ・オーディナリー・ボーイズ、アークティック・モンキーズといったUKインディーロックバンドの活況とも共鳴し、2000年代半ばの英国音楽シーン全体に大きな影響を与えた存在として、その功績は多角的に評価されています。

もう一度検索