ザ・デイ・ビフォア・ユー・ケイム

ABBAの代表曲の一つとして名高い「ザ・デイ・ビフォア・ユー・ケイム」。1982年10月18日にリリースされたこのシングルは、ベストアルバム『The Singles: The First Ten Years』に収録された新曲として発表されました。

リードボーカルを務めたのは、ABBAのメンバーであるアグネッタ・フォルツコグ。彼女の透き通るような歌声と、楽曲の持つ独特の抒情性が絶妙に融合したこの曲は、多くのリスナーの心を掴みました。歌詞は、恋人と出会う前の女性の心情を繊細に描写しており、運命的な出会いを予感させるような、淡く切ない感情が表現されています。日本語タイトルは「あなたが現れる前の日」と訳され、そのロマンチックな響きも人気の理由の一つでしょう。

この曲は、主にヨーロッパ諸国で大きな成功を収めました。フィンランドではチャート最高2位を記録するなど、高い人気を誇りました。オランダ、スウェーデン、ベルギーでは3位、オーストリア、カナダ、西ドイツ、ノルウェー、スイスなどでもトップ10入りを果たすなど、ヨーロッパ圏では広く支持されたことがわかります。

しかし、イギリスやフランスといった国々では、チャート成績は芳しくありませんでした。フランスでは38位、全英シングルチャートでは32位と、ヨーロッパ圏での成功とは対照的な結果となりました。国ごとの音楽嗜好や、プロモーション戦略の違いなどが、こうした結果に繋がったと考えられます。興味深いのは、その後の再リリースです。ABBAのアルバム『ザ・ヴィジターズ』にもボーナストラックとして収録されており、長きに渡って愛され続ける楽曲であることが分かります。日本で最初にシングルとして発売された際は「ビフォー・ユー・ケイム」というタイトルでリリースされました。

ミュージックビデオも制作されており、アグネッタが電車の中で見知らぬ男性と出会い、やがて恋に落ちていくというストーリー仕立てになっています。映像作品としても高い完成度を誇り、楽曲の世界観をさらに深める役割を果たしています。電車という公共空間での出会いを舞台に、二人の微妙な感情の揺らぎが丁寧に描かれている点は見どころです。アグネッタの繊細な表情や仕草、そして二人の視線が交わる瞬間など、細部までこだわった演出が、多くのファンを魅了し続けています。

「ザ・デイ・ビフォア・ユー・ケイム」は、ABBAの楽曲の中でも特に人気が高い曲の一つです。その美しいメロディー、繊細な歌詞、そして印象的なミュージックビデオは、多くのリスナーの心に深く刻まれています。ヨーロッパ各国でヒットした一方で、イギリスやフランスでは苦戦したという、その成功と挫折の両面が、この楽曲をさらに魅力的にしているのかもしれません。

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