ザ・デッド/「ダブリン市民」より

映画『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』について

『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』は、1987年に公開されたジョン・ヒューストン監督による映画です。この作品は、アイルランドの著名な作家ジェイムズ・ジョイスの短編集『ダブリン市民』の一篇「死者たち」を基にしています。ヒューストン監督にとっては、公開前に他界したため、遺作という位置づけとなっています。

ストーリー

物語の舞台は1904年のダブリンのクリスマス。雪が降りしきる中、大学教授のガブリエル・コンロイは妻のグレタと共に、親しい親戚たちが主催する舞踏会に向かいます。この舞踏会は年老いたモーカン叔母姉妹、ジュリアとケイト、そして彼女たちの姪メアリーによって毎年開催されています。参加者たちは、メアリーのピアノ演奏やグレイ氏の詩の朗読を楽しみながら、和やかな雰囲気の中で交流を深めます。

ガブリエルが舞踏会のスピーチを終えた後、別れの時に歌手のバーテル・ダーシーが唄うアイルランドのバラード「オクリムの乙女」を耳にしたとき、グレタは突然、普段の彼女とは異なる様子を見せ始めます。後にホテルに戻った後、グレタはその歌が彼女の思い出を呼び起こしたことを明かします。特に、彼女が幼少期に出会った少年マイケル・フューリーに関する悲しい思い出が心に響きます。

彼女の語るところによれば、かつてマイケルは結核に侵され、会うことが適わなかったのですが、グレタがダブリンを発つ日、彼はひとり冷たい雨の中で庭先に立っていたといいます。そこで亡くなってしまった彼の最後の姿が、今もグレタの心を捉えています。

この出来事によって、ガブリエルは自身の内面に秘められた嫉妬や、彼女への思いを深く考えるようになります。愛情が憐れみに変わり、さまざまな思い出が彼の脳裏に甦ります。物語は、目に見えない死者たちがこの世に溢れている様子を描写しており、降り続ける雪があたかも彼らを包み込んでいるかのように描かれています。

キャスト

映画には著名な役者が揃っています。グレタ・コンロイを演じたのはアンジェリカ・ヒューストン、ガブリエル・コンロイ役にはドナルド・マッキャンがキャスティングされています。また、リリー役を演じるのはレイチェル・ダウリング、ジュリア役にはキャスリーン・ディレーニーが出演しています。その他にも多くのキャストがストーリーを豊かにしています。

受賞とノミネート

『ザ・デッド』はその映像美や深いテーマ性が評価された作品であり、多くの映画祭で受賞やノミネートを重ねています。

この映画は、愛と死、そして思い出の力を丁寧に描いた傑作であり、ヒューストン監督の深い視点が光る作品として、多くの人々の心に残ることでしょう。

もう一度検索