ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!

ビートルズ初の公式ライブアルバム：ハリウッド・ボウルの熱狂

1977年5月、ビートルズのライブアルバム『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!』(原題: The Beatles at the Hollywood Bowl)が発売され、世界中のファンを熱狂させました。これは、1964年と1965年にロサンゼルスのハリウッド・ボウルで行われたコンサートの模様を収録した、待望の公式ライブアルバムとして、彼らの歴史に新たな1ページを刻むこととなりました。

アルバム制作の道のり：困難と工夫の連続

実は、このアルバムの制作には数々の困難が伴っていました。当初、ニューヨークのカーネギーホールでのライブ録音を目指していましたが、米国音楽家連盟の許可が下りず、計画変更を余儀なくされました。舞台はハリウッド・ボウルへと移り、1964年8月と1965年8月の公演が録音対象となりました。3トラックレコーダーを使用した当時の技術では、音質に限界があり、満足のいく結果が得られませんでした。このため、完成したテープは長らく日の目を見ることはありませんでした。

その後、1971年には、ジョン・レノンやジョージ・ハリスンらのアルバムをプロデュースしていたフィル・スペクターにマスターテープが渡されましたが、スペクターによる作業は進展せず、アルバム発売には至りませんでした。その後6年間、マスターテープは放置されたままとなります。この間には海賊盤が出回るなど、様々な出来事が起こりました。

転機となったのは、キャピトル・レコードの社長バスカー・メノンの判断でした。彼は、ビートルズの初期ライブ音源を収録した海賊盤の存在を知り、再びマスターテープを取り寄せ、ジョージ・マーティンによるリプロデュースを依頼しました。マーティンは、エンジニアのジェフ・エメリックと共に、3トラックテープをマルチトラックに移し、両日のベストトラックを選び出して、最新の技術を駆使し、リミックスとフィルタリングを行いました。この作業はロンドンのエア・スタジオで行われ、1977年1月に完成しました。

アルバムには、オーバーダビングは一切行われていないとの記述があり、当時の演奏の臨場感を伝えることを目指しました。しかしながら、収録された楽曲は、両日の公演で演奏された楽曲の全てではなく、一部楽曲は未収録となっています。これらの未収録楽曲の中には、後に他のアルバムやシングルで日の目を見るものもありました。

リマスター盤『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』

長らく廃盤となっていたこのアルバムでしたが、2016年9月9日、ロン・ハワード監督によるドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』の公開に合わせて、リマスター盤『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』(Live at the Hollywood Bowl)が発売されました。

このリマスター盤では、アナログ盤未収録だった4曲が追加収録され、ジャケット写真も一新。さらに、ジャイルズ・マーティンとサム・オーケルによる、マスターテープからの丁寧なリミックスとリマスターが施され、音質も大きく向上しています。邦題も原題に近いものに改められました。

アルバムの商業的成功とその後

『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!』は、イギリスではパーロフォンから、アメリカではキャピトル・レコードからリリースされました。大々的なテレビ広告も展開され、イギリスでは全英シングルチャートで1位を獲得、アメリカでもBillboard 200で2位、Cashbox誌で3位と高い順位を記録しました。英国レコード産業協会からはミリオンセラーにも認定されています。

リマスター盤の発売は、ビートルズの歴史における重要なライブ音源を、現代の技術で蘇らせただけでなく、新たな世代のファンにも届ける機会を創出しました。ハリウッド・ボウルの熱狂的なライブの雰囲気、そしてビートルズの卓越した演奏技術を体感できる、まさに歴史的なアルバムと言えるでしょう。

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