ザ・ルーム

映画『ザ・ルーム』解説

『ザ・ルーム』（原題: The Room）は、2003年にアメリカで製作された恋愛映画です。しかし、その内容は一般的な恋愛映画とは一線を画し、公開当初から酷評の嵐を巻き起こしました。製作、監督、主演を務めたのは、トミー・ウィゾー。彼の独特すぎるセンスが、本作を唯一無二の存在へと押し上げました。

当初は単純なストーリーにもかかわらず、理解に苦しむ演出、脚本、演技の拙さなど、ほぼ全ての要素が酷評されました。しかし、その「酷さ」ゆえの面白さを見出す観客が徐々に増加。現在では「駄作界の市民ケーン」とも称される、カルト映画としての地位を確立しています。

製作の裏側

映画製作が初めてだったウィゾーを差し置いて、現場スタッフが尽力することで、本来もっと酷い出来になるはずだったものが、根本的な問題を回避しました。しかし、それでも酷評を免れることはできませんでした。その混乱した製作過程は、2017年の映画『ディザスター・アーティスト』で詳細に描かれています。

ウィゾー自身は、本作がカルト映画と呼ばれることに異を唱え、「この映画は表現の自由を体現した作品であり、観客に自己表現を促す映画だ」と主張しています。

名場面

ジョニーが「I did not hit her. It's not true. It's bullshit. I did not hit her. I did not. Oh, hi Mark. 」と呟くシーン、そしてジョニーがリサに向かって「You are tearing me apart, Lisa!」と叫ぶシーンは、本作を代表する名場面として知られています。

再評価と拡大公開

『ディザスター・アーティスト』の興行的成功を受け、本作は2018年1月10日に全米600館で拡大公開されました。公開から10年以上が経過した映画が、これほどの規模で拡大公開されるのは異例のことです。

日本での公開

長らく日本国内での鑑賞が困難だった本作ですが、2020年3月に「未体験ゾーンの映画たち2020」のクロージング作品として初上映されました。

あらすじ

サンフランシスコを舞台に、銀行員のジョニーと婚約者のリサ、そしてジョニーの親友マークを中心に物語が展開されます。

ジョニーはリサを心から愛し、惜しみなく愛情を注ぎますが、リサはどういうわけかジョニーとの生活に満足できません。リサは親友のミシェルや母親のクローデットにジョニーへの不満を漏らし、ついにはジョニーの親友であるマークを誘惑してしまいます。

結婚の日が近づく中、リサはジョニーが仕事で伸び悩んでいることを知り、苛立ちを募らせます。そして、ジョニーに暴力を振るわれたと嘘をつき、家族や友人の前で吹聴し始めます。さらに、母親に不倫を告白するのを聞いてしまったジョニーは、不倫相手を特定するために家の電話にテープレコーダーを仕掛けます。

物語は様々な出来事を経て、ジョニーの誕生日パーティーへと進みます。パーティーでリサは皆の前でジョニーとマークの不倫を暴露し、ジョニーは絶望の淵に立たされます。そして、浴室に閉じこもったジョニーは、リサに別れを告げ、自ら命を絶ってしまうのです。

主要キャスト

ジョニー: トミー・ウィゾー
リサ: ジュリエット・ダニエル
マーク: グレッグ・セステロ
デニー: フィリップ・ハルディマン

タイトルの意味

ウィゾーによると、タイトルの『The Room』は「関係」を意味し、部屋は私たち自身、そしてアメリカにいる全ての人々を象徴しているとのことです。人々は部屋の中で笑ったり泣いたり、自分自身を表現することができます。ただし、お互いを傷つけ合うようなことは避けるべきだと、ウィゾーは語っています。

問題点

本作は、登場人物の感情や行動に一貫性がなく、無意味なシーンが多い点が指摘されています。多くのストーリーラインが導入されるものの、深く掘り下げられることはありません。

その他の不可解な点

冒頭のセックスシーンで、唐突に昼から夜に変わる
セックスシーンが不自然に長く、80年代のポルノビデオのよう
タキシードを着た男たちがフットボールをするシーン
額縁に入ったプラスチック製のスプーンの写真が複数回映る

製作の背景

本作は、ウィゾー自身の人生に起きた出来事を土台としています。リサのモデルとなったのは、ウィゾーが婚約していた女性だと言われています。また、ウィゾーはテネシー・ウィリアムズの戯曲を参考に脚本を書いたと述べています。

サウンドトラック

本作の楽曲は、ムラデン・ミルセヴィッチが作曲しました。エンディングテーマとして使用された『You're My Rose』は、キトラ・ウィリアムズ&リフレクションが歌っています。

評価

本作は、脚本、演技、演出など、あらゆる要素において酷評されました。しかし、その「酷さ」が逆にカルト的な人気を博し、現在では「駄作界の市民ケーン」として愛されています。

深夜興行

当初は興行的に失敗しましたが、深夜上映会でカルト的な人気を博し、現在では世界中の映画館で定期的に上映されています。

まとめ

映画『ザ・ルーム』は、その独特な魅力で観客を惹きつけ、カルト映画としての地位を確立しました。一度見たら忘れられない、強烈な印象を残す作品です。

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