ザ・島本

ザ・島本

『ザ・島本』は、漫画家・島本和彦氏が徳間書店から刊行した短編集です。氏の初期から中期にかけての創作エネルギーと多様な試みが凝縮された一冊と言えるでしょう。本書には、熱血的なアクションやギャグ作品、そして意欲的な異ジャンル作品などが収録されており、島本氏の幅広い表現力を垣間見ることができます。

収録作品

炎の転校生・怪獣戦闘!

表題作の一つである「炎の転校生・怪獣戦闘！」は、島本氏の代表作の一つである『炎の転校生』から派生した作品です。詳細については、関連項目である『炎の転校生』の項目内に記述されていますが、この短編集の核となる熱いスピリットを体現しています。

太陽の戦士ウインドブレーカーX

『週刊少年サンデー増刊号』1986年9月号に掲載された読み切り作品です。主人公が、とある少女が転校するまでの限られた期間、彼女の制服を様々な困難から守り抜くというユニークな設定を描いています。島本氏らしい情熱とコミカルな展開が特徴です。

ほとんどヒーロー

この作品は、『週刊少年サンデー』本誌において、1983年の10号から14号にかけて短期集中連載されたものです。島本氏にとって、これが『週刊少年サンデー』本誌での記念すべき初掲載作品であり、また、初めて原作なしで自身単独で連載を手がけた作品でもあります。同時期には増刊号で雁屋哲氏原作の『風の戦士ダン』も連載されていましたが、「ほとんどヒーロー」はそれとは大きく異なる雰囲気を持っています。

連載第1話である「朝の全力疾走」は、当時の雑誌としては珍しくオール2色で掲載されました。また、単行本化にあたって加筆・修正が行われており、特に第3話「勇者の復活」は、雑誌掲載時には6ページ分が割愛されていましたが、『ザ・島本』には完全に収録されています。作中には、気づかれずに居眠りする特殊能力を持つ「眠 勇士（ねむり ゆうじ）」といった個性的なキャラクターも登場します。

恋の資格がナッシング

『ちゃお』1987年5月号に掲載された、異色の作品です。少女漫画雑誌である『ちゃお』に初掲載された作品であり、島本氏の他の作品と比較すると、絵柄が比較的少女漫画風になっているのが特徴です。普段の熱血路線とは異なる一面を見せる、興味深い試みと言えるでしょう。

あとがき漫画

本書の初版には収録されていませんでしたが、第2版以降において追加掲載されたあとがき漫画です。作者自身の創作秘話や当時の心境などが描かれており、作品世界の裏側を知ることができる貴重なコンテンツとなっています。

本書の意義

『ザ・島本』は、島本和彦氏の初期の代表的な短編や、実験的な作品が一堂に会した短編集であり、漫画家としてのルーツや多様な引き出しを知る上で非常に重要な資料価値を持っています。熱血アクションからギャグ、そして普段とは異なるジャンルへの挑戦など、島本氏の「燃える筆魂」の片鱗を様々な形で感じ取ることができる一冊です。

関連項目

炎の筆魂：朝日ソノラマから刊行された、島本和彦氏の別の短編集です。
炎の転校生：『炎の転校生・怪獣戦闘!』の直接的な派生元となった作品です。詳細については、関連する項目を参照してください。

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