シェラック

シェラックについて

シェラック（英語:shellac）は、ラックカイガラムシ（Laccifer lacca）などのカイガラムシが作る樹脂とも言える物質で、人々の生活に幅広く用いられてきました。日本語では「セラック」とも呼ばれ、漢字では「紫膠」と表記されることがあります。シェラックは特に工業、食品、医療などの分野で重要な役割を果たしています。

性状の特徴

常温下において、シェラックは黄色から褐色の透明な固体で見られますが、精製のプロセスを通じて白色の透明な物質に変わります。この物質は無味無臭であり、人体には有害ではないため、多様な用途に利用されています。また、シェラックの特性として、通常は熱可塑性を保持しますが、特定の温度になると熱硬化性へと変わることがあります。

シェラックはアルコール系溶剤には溶けやすい一方、他の有機溶剤には耐性があるため、アルコール溶液や水溶液から蒸発させることで、透明な膜を形成することが可能です。

成分構成

シェラックの主要な成分は、樹脂成分と呼ばれるシェロリン酸やアロイリット酸などの約75％を含む塊であり、さらにタカルジアセロールやラクセロールなどのワックス成分や色素成分といったその他の成分が存在します。これにより、シェラックは特有の特性と用途を持つ複雑な物質となります。

生産地と出荷

シェラックは主に東南アジアや南アジアのインドやタイで生産され、最近では中国の雲南省や四川省でも同様に養殖されているラックカイガラムシから得られています。このカイガラムシは、1cmにも満たない小さな生物で、特定の樹木に寄生し、群れで生活します。彼らの体表から分泌される成分が集まり、宿主となる樹木の小枝を取り囲む形状を作ります。これを夏に収集し、粉砕後に熱や溶媒を使用して抽出することで、シェラックが得られます。

多様な用途

シェラックは日本工業規格（JIS K 5909）や日本薬局方、また食品衛生法に記載されるなど、幅広い用途が確認されています。工業分野では、製紙用のサイズ剤や塗料、インク、楽器のニス、接着剤、ワックス、剥離材として活躍しています。また、音楽の記録に使われる初期のSP盤など、音を記録する素材としても歴史的に重要です。

更に食品においては、レモンやグレープフルーツなどの柑橘類の光沢を与えるフルーツワックスや、天津甘栗の光沢剤としても利用されています。

医療分野では、薬品や食品のコーティング材としての利用が注目されています。また、伝統的な中国医学では「紫草茸」や「紫膠」として知られ、清熱解毒の作用があるとされています。

シェラックはその多用途性が多くの人々に支持され、今もなお様々な形で製品に利用され続けています。

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