シェリル・クロウ (アルバム)

シェリル・クロウのセルフタイトル・アルバム『シェリル・クロウ』は、彼女が1996年にリリースした2作目のスタジオ・アルバムです。前作『チューズデイ・ナイト・ミュージック・クラブ』の成功を受け、本作ではクロウ自身がプロデュースを手掛け、よりパーソナルな音楽性を追求しています。

制作の背景

アルバムの制作には、前作にも参加したジェフ・トロットが大きく貢献しており、楽曲制作と演奏の両面で中心的な役割を担いました。また、「ハード・トゥ・メイク・ア・スタンド」と「オー・マリー」では、ミッチェル・フルームがアシスタント・プロデューサーとしてクレジットされています。

特筆すべきは、レコーディング期間中の1996年3月に、クロウがヒラリー・クリントンと共にボスニアを訪問したことです。この経験は、帰国後に制作された「救いの日」に色濃く反映されています。戦争の悲惨さや人道支援の必要性を訴えるこの曲は、クロウの社会的なメッセージを伝える代表的な楽曲の一つとなりました。

物議を醸した歌詞

「ラヴ・イズ・ア・グッド・シング」は、歌詞に「ウォルマートで買った銃で殺し合う」というフレーズが含まれていたため、ウォルマートでの販売が拒否されるという事態を引き起こしました。この出来事は、銃社会アメリカの問題点を浮き彫りにすると共に、クロウの音楽が社会に与える影響の大きさを改めて示しました。

グラミー賞受賞と評価

本作は、第39回グラミー賞で最優秀ロック・アルバム賞を受賞し、シングル・ヒット曲「イフ・イット・メイクス・ユー・ハッピー」は最優秀女性ロック・ボーカル・パフォーマンス賞を受賞しました。音楽的な評価も高く、『エンターテインメント・ウィークリー』誌の「1983年から2008年のベスト・アルバム100」では39位に選ばれています。また、『ローリング・ストーン』誌の「歴代最高のアルバム500選」にも選ばれるなど、その音楽史における重要性は高く評価されています。

収録曲について

アルバムには、「メイビー・エンジェルス」「ア・チェンジ」「ホーム」など、多様なジャンルの楽曲が収録されています。日本盤にはボーナス・トラックとして「サッド・サッド・ワールド」と「フリー・マン」が、ヨーロッパ盤には「Sad Sad World」と「Hard To Make A Stand (Alternate Version)」が追加収録されています。

参加ミュージシャン

シェリル・クロウ本人の他に、ジェフ・トロット、トッド・ウルフ、スティーヴ・ドネリーなど、多数のミュージシャンが参加しています。ニール・フィンがバッキング・ボーカルとして参加している点も注目です。多彩なミュージシャンたちの参加が、アルバムの音楽的な奥行きを深めています。

『シェリル・クロウ』は、音楽的な完成度だけでなく、社会的なメッセージ性や話題性においても、彼女のキャリアを代表する作品の一つと言えるでしょう。

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