シェルパ

シェルパとは

シェルパ（Sherpa）は、ネパールの少数民族であり、主にエベレスト南麓のクンブ地方に居住しています。2001年の調査では約15万人が確認されており、ネパール総人口の約0.5%を占めています。彼らの居住地は、ヒマラヤ山脈の観光地としても知られ、多くの観光客が訪れます。シェルパは、その卓越した登山能力と高地への適応力から、ヒマラヤ登山における重要な役割を担っています。

歴史

シェルパの祖先は、17世紀から18世紀にかけてチベット東部からヒマラヤ山脈を越えてネパールに移住してきたとされています。寒冷な高地での生活は厳しく、19世紀までは主に放牧と交易で生計を立てていました。20世紀に入り、外国人によるヒマラヤ登山が盛んになると、シェルパはその高地適応能力を活かしてポーターとして雇われるようになりました。その後、登山技術を習得し、ガイドとしても活躍するようになり、ヒマラヤ登山に欠かせない存在となりました。かつて、登山隊のシェルパリーダーは「サーダ」と呼ばれ、登山隊員から尊重されていましたが、1990年代以降、商業登山が活発化すると、シェルパは消耗品のように扱われることもありました。2013年にはシェルパと登山家の間で暴力事件が発生し、シェルパの地位向上や遭難時の補償を求める声が高まりました。2014年の雪崩災害では、多くのシェルパが犠牲となり、登山隊が活動を断念する事態となりました。その後、ネパール政府はシェルパへの補償を拡充しました。

文化

シェルパは、チベット語の方言であるシェルパ語を話します。また、ネパール語や英語に通じる人も多くいます。宗教はチベット仏教を信仰しています。20世紀後半以降、ヒマラヤ登山が活発化すると、シェルパは登山ガイドとして高収入を得る機会が増えました。しかし、登山ガイドは危険な仕事であり、多くのシェルパが命を落としています。一方で、エベレスト山麓では観光客向けのロッジ経営や通訳といった仕事も増え、観光業は重要な産業となっています。近年、登山客による環境破壊が問題となっており、シェルパの間では自然保護団体を組織する動きも出ています。

シェルパの登山能力

シェルパの山岳ガイドは、卓越した身体能力を持ち、世界の一流登山家に匹敵する実力を持つ者もいます。しかし、彼らは登山を「仕事」と捉えており、登山家のように記録や栄光を求めて山に登ることは稀です。近年、報酬を得るためだけでなく、登山チームの一員として山に挑むシェルパも増えてきています。2021年には、オール・ネパール体制の登山隊が厳冬期のK2登頂に成功し、シェルパの登山能力が改めて世界に示されました。同行したシェルパの中には、8000メートル峰14座を制覇した者や、エベレストとK2の最速登頂記録を持つ者もいます。

シェルパの用法

元々、少数民族の名称であったシェルパは、ヒマラヤの登山ガイドを表す一般名称としても使われるようになりました。現在では、他の民族の出身者でもシェルパを名乗ることがあり、登山における荷物運びや案内役を指す言葉としても用いられます。日本では、かつて「強力」と呼ばれていた人々がシェルパと名乗ることもあります。さらに、主要国首脳会議（サミット）の準備会議を行う側近や代理人を「シェルパ」と呼ぶこともあります。鉄道の急勾配区間で使用される補助機関車を「シェルパ」と呼ぶこともあります。

シェルパが登場する作品

NHKスペシャル「エベレスト～世界最高峰を撮る」では、シェルパの活躍が詳しく紹介されています。番組では、シェルパの登山前の祈り、ルート整備、遭難者の救助、遺体回収など、多岐にわたる活動が記録されています。また、NHK取材班とシェルパのリーダーが共に山頂を踏破し、喜びを分かち合うシーンも印象的です。番組を通じて、シェルパの強靭な体力、誠実な人柄、そして登山における重要な役割が描かれています。

関連項目

テンジン・ノルゲイ
歩荷
* チベット民族

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