シカゴ (ミュージカル)

ミュージカル『シカゴ』：魅惑とスキャンダルの歴史

1920年代のアメリカ、禁酒法時代のシカゴ。この街で起きた実際の犯罪を題材に、1975年に初演されたミュージカル『シカゴ』は、以来世界中で愛され続けるロングラン作品となりました。華麗なダンスと、現代社会を鋭く風刺するストーリー、そして忘れられない楽曲の数々で、観客を魅了し続けています。

衝撃の事件とメディアの狂騒

物語の原点は、1920年代初頭のシカゴで発生した2件の女性殺人事件。当時、『シカゴ・トリビューン』紙の女性記者モウリン・ダラス・ワトキンスは、これらの事件を取材し、その様子をセンセーショナルに報道しました。女性が恋人や夫を殺害するという事件は、当時の社会に大きな衝撃を与え、メディアは殺害された人物よりも、容疑者となった魅力的な女性たちに注目しました。陪審員は全て男性であり、女性被告の魅力が裁判の結果に影響を与えたとさえ言われています。ワトキンスの記事は、メディアのセンセーショナリズムと、社会の歪みを見事に浮き彫りにしました。

ワトキンスは、この経験をもとに演劇『シカゴ』を執筆。この演劇は、社会現象ともいうべき人気を博し、1926年にはブロードウェイに進出しました。その後、サイレント映画化もされ、1942年にはリメイク作品も制作されています。

フォッシー演出によるミュージカル化

1960年代、グウェン・ヴァードンとボブ・フォッシー夫妻は、この演劇をミュージカルとして再構築することを思いつきます。フォッシーは独特の演出と、当時としては斬新な振付で、演劇に新たな生命を吹き込みました。ジョン・カンダーとフレッド・エブによる音楽も、物語の雰囲気を見事に表現しています。

『シカゴ』の成功は、ボブ・フォッシーの才能によるところが大きいです。彼の演出は、現実と舞台の境界を曖昧にするスタイルで、観客を作品の世界に引き込みます。また、彼の振付は、ジャズダンスを基調としつつ、セクシーで挑発的な動きを取り入れ、多くの観客を魅了しました。

ストーリー：欲望と正義の狭間で

舞台は1920年代のシカゴ。ヴォードヴィリアンを目指すロキシー・ハートとヴェルマ・ケリー、それぞれの愛人を殺害し、裁判にかけられる2人の女性の姿が描かれます。

第1幕では、ロキシーの逮捕、クック郡刑務所での生活、そして悪徳弁護士ビリー・フリンとの出会い、メディアの操作によるロキシーのスター化、ヴェルマとの確執などが描かれます。

第2幕では、ロキシーの裁判、メディアの無関心、そしてロキシーとヴェルマの友情、新たなスタートなど、波乱万丈な物語が展開していきます。

音楽とダンス：ヴォードヴィルの華麗な世界

『シカゴ』の音楽は、ヴォードヴィルを基調としたジャズ、ラグタイムなど、様々な要素が混ざり合っています。独特のリズムとメロディは、物語の雰囲気を高め、観客を作品の世界に引き込みます。また、フォッシー独特の振付は、物語のテーマを視覚的に表現しており、作品全体の完成度を高めています。

特に有名な曲としては、「All That Jazz」、「Cell Block Tango」、「When You're Good to Mama」、「Razzle Dazzle」などがあります。これらの曲は、舞台上でのダイナミックな演出と相まって、観客に強烈な印象を与えます。

ブロードウェイでの成功と世界への広がり

『シカゴ』は1975年のブロードウェイ初演後、ロングラン公演を記録。1996年の再演では、さらに大成功を収め、ブロードウエイ再演作品として最長のロングラン記録を樹立しました。

ウエストエンドでもロングラン公演が続き、世界各国で公演が行われています。映画版も制作され、2002年のアカデミー賞作品賞を受賞しました。

日本での公演

日本でも多くの公演が行われ、数々のスターがロキシーやヴェルマを演じてきました。宝塚歌劇団による公演も話題を呼びました。

まとめ

ミュージカル『シカゴ』は、センセーショナルな事件を題材にしながらも、メディアや社会に対する鋭い風刺、そして華麗な音楽とダンスで観客を魅了する傑作です。その歴史、ストーリー、楽曲、主要キャストなど、様々な側面から『シカゴ』の魅力を紐解いてみました。 その魅力は、今後も多くの観客を惹きつけ続けることでしょう。

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