シカゴ・サーフェス・ライン

シカゴ・サーフェス・ライン：世界最大の路面電車網とその歴史

シカゴ・サーフェス・ラインは、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴにおいて、かつて存在した路面電車網の運営組織です。単一の企業ではなく、複数の民間企業と公営組織が協力して運営されており、その規模は世界最大級を誇っていました。

黎明期：馬車鉄道からケーブルカーへ

1850年代のシカゴにおいて、公共交通機関の主流は馬車でした。しかし、未舗装道路の問題から、より近代的な交通手段の必要性が高まりました。そのため、1850年代後半から、馬車鉄道の建設を目指す企業が次々と設立されました。1859年には最初の馬車鉄道が開通し、シカゴ市内各地へと路線網は拡大していきました。

しかし、馬車鉄道は運行費用が高く、速度も遅いという課題がありました。そこで、シカゴ市街鉄道は1882年に循環式ケーブルカーの運行を開始しました。これは、線路の中央にケーブルを設置し、車両を牽引するシステムです。ケーブルカーは馬車鉄道に比べて輸送力と速度が大幅に向上し、多くの企業がケーブルカー路線を建設しました。シカゴは、世界最大規模のケーブルカー網を持つ都市となりました。

路面電車の台頭とシカゴ・サーフェス・ラインの設立

1890年、シカゴに最初の路面電車が登場しました。ケーブルカーよりも効率的で高速な路面電車は、徐々にケーブルカーや馬車鉄道にとって代わっていきました。1906年には、シカゴ市内からケーブルカーと馬車鉄道は姿を消しました。

しかし、路面電車事業者の乱立により、運賃や乗り換えの混乱が生じていました。これを解決するため、1907年にはシカゴ市監督技師局が設立され、運賃の統一や相互直通運転などが推進されました。そして、1914年、シカゴ市議会の条例により、4つの路面電車企業を統合した「シカゴ・サーフェス・ライン」が誕生しました。

全盛期：世界最大の路面電車網

シカゴ・サーフェス・ラインは、最大で1,770kmを超える路線網を誇り、平日の1日平均利用客数は220万人に達しました。これは、路線長と利用客数において、世界最大規模の路面電車網でした。1920年代以降は、バスやトロリーバスも導入され、路面電車網を補完しました。

公営化と終焉

1920年代以降、アメリカでは自動車やバスの普及が進み、路面電車は衰退の道を辿りました。シカゴ・サーフェス・ラインも、財政難に陥り、1944年には破産法の適用を受けました。

そのため、シカゴ市は、シカゴ・サーフェス・ラインを含む市内公共交通機関を公営化することを決定し、1945年にシカゴ交通局（CTA）を設立しました。1947年、シカゴ・サーフェス・ラインはCTAの運営に移管されました。

CTAは、路面電車の路線網縮小を進め、1958年には最後の路面電車路線も廃止されました。100年近く続いたシカゴの路面電車の歴史は、幕を閉じました。トロリーバスも1973年に廃止されました。

車両

シカゴ・サーフェス・ラインは、多数の路面電車車両を保有していました。1941年には3,600両以上の車両が在籍していました。車両の製造メーカーは多様で、シカゴ・サーフェス・ライン自身も車両の製造や改造を行っていました。これらの車両は、路線の縮小に伴い廃車されましたが、一部は博物館などで保存されています。

廃止後

路面電車廃止後、バス路線が路面電車路線を代替しました。多くのバス路線は、路面電車時代の路線番号を維持しています。路面電車の跡地は、多くの場合、アスファルトで覆われています。

シカゴ・サーフェス・ラインは、その規模と歴史において、世界的な路面電車網として重要な存在でした。その歴史は、現代の公共交通システムを考える上で重要な教訓を与えてくれます。

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