シグナス森林鉄道

シグナス森林鉄道：妙見の森を駆け抜けた小さな軌跡

兵庫県にある妙見山のふもと、妙見の森ふれあい広場でかつて運行されていたシグナス森林鉄道をご存知でしょうか？能勢電鉄が運営していたこの小さな観光鉄道は、2001年5月の暫定開業を経て、同年7月から正式に運行を開始しました。全長340mの短い路線ながら、多くの観光客を魅了し、2022年2月の廃止まで親しまれてきました。

はくちょう座にちなんだ命名と、個性的な運行形態

鉄道の名称は、妙見山に伝わる北極星信仰にちなんで、北天を代表する星座であるはくちょう座（シグナス）に由来しています。ベガ駅とアルタイル駅というロマンチックな駅名も、その信仰を反映しています。

バッテリー機関車が2両の客車を牽引するこの鉄道は、軌間381mm（15インチ）と非常に狭く、最高速度は5km/hとゆっくりとした運行でした。約10分の短い周遊時間の中で、乗客は妙見の森の豊かな自然を満喫できたことでしょう。

特筆すべきは、ベガ駅を出発してすぐの場所に設置された、長さ10mほどのリッゲンバッハ式のラックレール区間です。最大勾配138‰という急勾配を、このラックレールによって安全に運行していました。アルタイル駅はループ状の折り返し地点であり、乗客はそこで下車して散策することはできませんでしたが、列車は一旦停止するため、写真撮影などの時間は確保されていました。運転手による記念写真の撮影サービスもあったようです。

廃止までの軌跡と、その背景

シグナス森林鉄道は、土日祝日のみ運行され、時刻表はなく、客席が満員になり次第出発するという、独特の運行形態を取っていました。定員はわずか8名でした。

2021年11月からは点検のため運休となり、そのまま冬期休業に入りました。しかし、老朽化などの問題を総合的に考慮した結果、2022年2月1日をもって運行再開は叶わず、廃止が決定されました。これは、多くのファンにとって残念なニュースであったことは間違いありません。

同時に、妙見の森ふれあい広場で営業していた「森のカフェあじさい」も2021年12月に閉店しています。シグナス森林鉄道とカフェは、妙見山の魅力を高める上で重要な役割を果たしていたため、両施設の閉鎖は、地域の観光にとって大きな損失となりました。

思い出と、未来への展望

シグナス森林鉄道は、短い運行期間にもかかわらず、多くの思い出を乗客に提供しました。その独特の雰囲気、ゆっくりとした運行、そして何よりも妙見山の美しい自然は、多くの人々の心に刻まれていることでしょう。

廃止後、その跡地がどのように活用されるのか、今後の展開に注目が集まります。新たな観光施設の建設や、自然環境の保全など、様々な可能性が考えられます。いずれにしても、シグナス森林鉄道がもたらした思い出を大切にしながら、妙見山の未来がより良いものとなることを期待したいものです。

運賃

大人：300円（中学生以上）
小人：200円（3歳以上）

関連情報

* 桜谷軽便鉄道（能勢電鉄妙見口駅から徒歩10分）

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