シコクテンナンショウ

シコクテンナンショウ (Arisaema iyoanum subsp. nakaianum)

シコクテンナンショウは、サトイモ科テンナンショウ属に属する多年草で、日本の四国にのみ自生しています。この植物は、山地の渓流沿いの急斜面に見られ、オモゴウテンナンショウ（A. iyoanum subsp. iyoanum）を基準にした亜種として分類されています。特徴的な形態を持ち、特にその花と葉の造形美が印象的です。

植物の特徴

シコクテンナンショウは、全体的に大きく、高さは30～60センチメートルに達します。この種の偽茎部は、葉柄部の2～3倍の長さを持ち、通常1枚の葉がつきます。その葉身は鳥足状に分裂し、小葉間の葉軸も発達します。小葉の数は7～15枚で、長楕円形または倒披針形をしており、先端は鋭くとがっているのが特徴です。葉の縁は全縁または微細な鋸歯があり、中央の小葉が最も大きく、長さは23センチメートルになることもあります。

花期は5月頃にあり、まず葉が展開し、その後に花序が姿を現します。花序の柄は葉柄に比べて短く、長さは1.5～6センチメートルです。仏炎苞は高さが12～23センチメートルあり、白色の筋が特徴的な紫褐色の筒を持っています。花序の基部には棍棒状の付属体があり、長さ6.5～10センチメートル、太さは5～12ミリメートル程です。

この植物は雄株と雌株があり、小型の株は雄花序を持ち、成長すると雌花序または両性花序へと変わります。こうした特徴から、シコクテンナンショウは雌雄偽異株であり、同一の株が性転換をすることが知られています。

生育環境と分布

日本特有の種として、シコクテンナンショウは四国の山地や渓流沿いの急傾斜地に生息しています。地元の土地柄に適応したこの植物は、湿気と日陰を好み、他の植物との共生関係を築きながら育っていきます。特に、基本種のオモゴウテンナンショウと共に生育することが多く、両種の雑種と思われる個体を見かけることもあります。

名称の由来

シコクテンナンショウという和名は、植物学者の大場達之によって名付けられました。最初は別の種と混同されていたため、命名の過程にはいくつかの変更がありました。最終的に、四国の生物多様性を象徴する名称が定着しました。

保全状況

シコクテンナンショウは、絶滅危惧IB類（環境省レッドリスト）に指定されています。特に徳島県では絶滅危惧IA類に該当し、愛媛県と高知県でもそれぞれ異なる評価がされています。

最後に

シコクテンナンショウは、その独自の特性と美しさから、多くの植物愛好者に愛される存在です。しかし、減少する生息地や分布の狭さから保護が求められており、私たちの存在が未来の環境に影響を与えることを忘れずにいたいものです。これからもこの素晴らしい植物を守り、理解を深めていくことが重要です。

もう一度検索