シソワット・シリク・マタク

シソワット・シリク・マタク：激動のカンボジアを生きた王族政治家

シソワット・シリク・マタク（1914年1月22日 - 1975年4月21日）は、カンボジアの王族であり、政治家として20世紀後半のカンボジア政局に深く関わりました。彼はシソワット王家の一員であり、ノロドム・シハヌークの従兄弟にあたります。

政治 करियर

1954年以降、シハヌーク政権下で国防相や外相などの要職を歴任しましたが、シハヌークとの関係が疎遠になり、一時的に政権の中枢から離れ、駐日大使などを務めました。しかし、ロン・ノルが首相に就任すると、副首相として再び政権の中枢に戻りました。

シリク・マタクは早くからシハヌークの政治姿勢に批判的であり、1970年3月18日、ロン・ノル首相と共にクーデターを決行。当時、病気治療のため北京に滞在していたシハヌークを国家元首から解任し、王制を廃止して国名を「クメール共和国」と改めました。クーデター実行時には、シハヌークへの忠誠心から決断を躊躇するロン・ノルを説得し、実行を促したと伝えられています。

しかし、国民からの人気が高かったシハヌークを打倒したことで、シリク・マタクは「陰謀家」と見なされ、周囲からの信望を得ることはできませんでした。1971年2月には、病気で倒れたロン・ノルに代わって首相職を代行しましたが、ロン・ノルの辞任後、シリク・マタクの首相昇格に対する反対が強く、最終的にはロン・ノルが再び首相に就任し、集団指導体制が取られることになりました。1972年には大統領となったロン・ノルにより首相に任命されましたが、彼と対立し、わずか1週間で罷免されています。

カンボジア内戦と悲劇的な最期

カンボジア内戦が激化し、共産勢力であるクメール・ルージュが勢力を拡大すると、シリク・マタクはロン・ノル大統領、ロン・ボレト首相、ソン・ゴク・タン元首相らと共に「七人の売国奴」と名指しされ、死刑判決を受けました。

1975年4月17日、クメール・ルージュによってプノンペンが陥落。シリク・マタクは数日前にアメリカへの亡命を勧められましたが、これを拒否しました。その後、避難していたプノンペンのフランス大使館にクメール・ルージュ軍が迫ると投降し、直後に殺害されました。

シリク・マタクの生涯は、カンボジアの激動の歴史を象徴するものと言えるでしょう。王族としての生い立ち、政治家としての野心、そして内戦という悲劇の中で迎えた最期は、カンボジア現代史における重要な出来事として記憶されています。

関連項目

カンボジア君主・国家元首一覧
カンボジア内戦
* ロン・ノル

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