シタデル、サン＝スーシ城、ラミエール国立歴史公園

シタデル、サン＝スーシ城、ラミエール国立歴史公園：ハイチの歴史を物語る世界遺産

シタデル、サン＝スーシ城、ラミエール国立歴史公園は、カリブ海に浮かぶハイチ共和国に位置するユネスコ世界遺産です。この地は、ハイチがラテンアメリカ初の独立国となった歴史を今に伝える貴重な場所であり、ハイチの人々にとって特別な意味を持っています。

シタデル：独立を守る巨大な要塞

シタデルは、標高970mのラフェリエール山の頂にそびえ立つ巨大な要塞です。1805年から1817年にかけて、アンリ・クリストフ（後のハイチ国王アンリ1世）によって建設されました。当時、独立したばかりのハイチは、旧宗主国であるフランスの再侵攻の脅威に晒されていました。シタデルは、その脅威から国を守るための要として建設されたのです。

要塞には365門もの大砲が備えられ、数万発の砲弾、巨大な食料庫、貯水槽も設置されました。長期にわたる籠城戦にも耐えられるように、万全の準備が施されていましたが、幸いにもフランス軍が実際に侵攻してくることはありませんでした。

シタデルの建設には、20万人もの人々が動員されました。しかし、アンリ・クリストフは、その完成からわずか3年後、国内の不満の高まりにより自殺に追い込まれます。彼の遺体は、サン＝スーシ城で自害した後、シタデルに埋葬されました。

サン＝スーシ城：カリブ海のヴェルサイユ

サン＝スーシ城（Palais Sans-Souci）は、アンリ・クリストフが居城としていた宮殿です。建設は1807年に始まり、1813年に完成しました。「サン＝スーシ」とはフランス語で「憂いなし」という意味です。

この城は、フランスのヴェルサイユ宮殿をモデルにしており、バロック様式が取り入れられています。内装は高級木材や大理石がふんだんに使われ、フランスやイタリアから取り寄せられた建材や装飾品で飾られていました。その豪華絢爛な様子から、「カリブ海のヴェルサイユ」とも呼ばれています。

アンリ・クリストフは、サン＝スーシ城を拠点にハイチを統治していましたが、国内の不満の高まりにより、1820年に城の庭園で自殺しました。伝説によれば、彼は銀の小銃で黄金の弾丸を撃ち込んだとされています。彼の息子であるジャック＝ヴィクトル・アンリも、同じ年に革命派によって殺害され、この城で生涯を終えました。

1842年にカパイシャン一帯を襲った地震で、サン＝スーシ城は大きな被害を受け、再建されることはありませんでした。現在では、廃墟となった姿を見ることができます。

ラミエール国立歴史公園：ハイチの独立の足跡

ラミエールの丘には、ラテンアメリカ初の独立国となったハイチの、独立当初の建造物群が数多く残っています。シタデルやサン＝スーシ城はその代表的なものです。ラミエールの丘とその周辺は、1978年に国立歴史公園に指定されました。この地区は、IUCN（国際自然保護連合）の分類では景観保護区とされています。

登録基準と登録理由

この世界遺産は、以下の登録基準を満たし、登録されました。

(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの（この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている）。

登録にあたっては、黒人奴隷が最初に勝ち得た独立国であるハイチにおいて、建国当初の姿を伝える貴重な史跡群であることが評価されました。

シタデル、サン＝スーシ城、ラミエール国立歴史公園は、ハイチの独立の歴史と、その礎を築いた人々の情熱と苦悩を今に伝える貴重な遺産です。この地を訪れることで、ハイチの歴史と文化に触れ、カリブ海の国の新たな魅力を発見することができるでしょう。

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