シデムシ

シデムシ

シデムシとは、昆虫綱コウチュウ目に属するグループのうち、ハネカクシ上科に分類されるシデムシ科（Silphidae）に含まれる様々な種の総称です。

特徴

この昆虫たちは、その名前が示す通り、動物の死体に集まる習性で特に知られています。その名の「死出虫」は、動物が命を終え、動かなくなった場所に出現することから名付けられたとされます。さらに、見つけた遺体を土の中に運び込んで埋めるというユニークな行動をとる種類がいることから、漢字では「埋葬虫」と表記されることもあります。

体長は比較的小さなもので3mm程度から、大きなものでは3cmほどになるまで、種類によって幅があります。頭部には獲物や餌を扱うための頑丈でよく発達した大顎を備え、触角は先端がやや膨らんだ形をしています。多くの種で体は比較的扁平な形状をしており、体色は黒系統のものが多い傾向にあります。

体形に関しては、モンシデムシの仲間とヒラタシデムシの仲間で異なる特徴が見られます。モンシデムシ類は、丸みを帯びた前胸部から、後方に向かって徐々に幅が広がる台形状の胴体を持つのが特徴です。体を覆う上翅（じょうし）の後方からは、腹部の先端がわずかに露出しています。多くの種で体には光沢があり、黒っぽい上翅に鮮やかな黄色の斑紋を持つものも存在します。一方、ヒラタシデムシ類は、全体的に扁平な小判形をしており、光沢のない艶消しの黒い体色が特徴です。こちらも、上翅の後ろから腹部の先端が少し突き出ています。

習性

シデムシの大半の種類は、その名の通り、動物の死肉を主な食料としたり、そこに発生するハエの幼虫を捕獲したりして生活しています。いわゆる動物の遺骸に強く依存した生態を持っています。しかし、中には動物の排泄物で育つハエの幼虫を専ら捕食する種も見られます。また、必ずしも死体だけでなく、朽ちたキノコや他の腐敗物に集まっている姿が観察されることもあります。

幼虫もまた、成虫とほぼ同じものを食料として成長します。ヒラタシデムシの仲間のように、幼虫が孵化後に自ら餌を探して独立して生活を送るタイプもいる一方で、親が積極的に幼虫を保護し、育てるという、昆虫としては比較的高度な育児習性が進化した種類も存在します。

育児習性：モンシデムシの亜社会性

とりわけモンシデムシ属（Nicrophorus）に属する種は、家族単位での生活を営む、いわゆる亜社会性の昆虫として知られています。これらは雌雄が一対となって協力し、小型の鳥類や齧歯類といった脊椎動物の遺体を見つけると、それを地中に埋める作業を行います。その後、遺体を幼虫が食べやすいように加工し、「肉団子」のような状態にします。そして、この肉団子を食料として、生まれてきた幼虫を手厚く保育するのです。親が口移しで幼虫に給餌する行動も確認されており、これほど献身的な育児を行う甲虫は、世界的に見てもクロツヤムシやチビクワガタなど、ごく一部に限られる、非常に珍しい例です。

この、見つけた遺体を土の中へ埋め込む行動は、著名な昆虫学者ジャン・アンリ・ファーブルの強い関心を引きつけました。彼の著書『昆虫記』の中では、このシデムシの埋葬習性を解明するための様々な観察や実験が詳細に記述されています。

日本の代表的なシデムシ

日本に生息するシデムシ科の昆虫のうち、比較的よく知られているいくつかの種を以下に挙げます。

クロシデムシ（Nicrophorus concolor）：モンシデムシ属の中では最大級の種であり、小型のヘビの遺体すら幼虫保育のための肉団子に加工してしまうほどの能力を持ちます。
オオヒラタシデムシ（Eusilpha japonica）：人里に近い山林などで最も普通に見られる種の一つです。地面を歩き回り、ミミズの死体などを摂食している姿をよく観察できます。
オオモモブトシデムシ（Necrodes asiaticus*）：かつての汲み取り便所などでよく見られ、そこに集まるハエの幼虫を主な餌としていたことがよく知られています。

シデムシの仲間は、生態系において死体を処理する重要な役割を担っており、その多様な形態や興味深い習性は、古くから多くの人々、特に昆虫学者の関心を集めてきました。

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