シトリニン

シトリニン：食品から検出される腎臓毒性マイコトキシン

シトリニンは、1931年にPenicillium citrinumというカビから発見されたマイコトキシンです。その後、様々なカビがシトリニンを生産することが判明し、穀物、チーズ、日本酒、さらには紅麹米など、私たちの食生活に身近な食品からも検出されています。

シトリニンの毒性

シトリニンは、動物実験において腎臓に強い毒性を示すことが知られています。家畜では、シトリニンが原因とされる真菌性腎症を引き起こす可能性があり、ヒトにおいてもバルカン腎症や黄色米熱との関連性が示唆されています。急性毒性の強さは種によって異なりますが、どの種においても腎臓への影響が確認されています。

シトリニンの毒性メカニズムは、ミトコンドリアの機能阻害にあります。具体的には、シトリニンはミトコンドリア透過孔を開口させ、呼吸鎖複合体IIIの機能を阻害することで細胞呼吸を抑制します。これは、細胞のエネルギー生産を妨げ、細胞の機能不全や死に至らしめる可能性があります。

また、シトリニンは皮膚からも吸収されることが確認されています。農業従事者や食品関係者など、シトリニンに接触する可能性のある職業に従事する人々にとっては、皮膚への接触を避けることが重要です。ただし、日常的な皮膚接触による顕著な健康リスクは現時点では確認されていません。

シトリニンの生産菌

シトリニンは、様々な種類のカビによって産生されます。代表的なものとして、以下の種が挙げられます。

Aspergillus niveus
Aspergillus ochraceus
Aspergillus oryzae（ニホンコウジカビ）
Aspergillus terreus
Aspergillus flavus
Monascus ruber
Monascus purpureus
Penicillium citrinum
* Penicillium camemberti

その他にも多くのカビがシトリニンを生産することが報告されており、その生産菌の幅広さが、食品への混入リスクを高める一因となっています。1971年には、保存中の羊毛の黄変に関与しているとの報告もあります。

食品安全への懸念

シトリニンは、様々な食品から検出されるため、食品安全の観点から重要な課題となっています。特に、紅麹米など、発酵食品におけるシトリニンの存在は、消費者の健康への影響を懸念させる要因となります。食品中のシトリニン濃度を適切に管理し、消費者の健康を守るための対策が求められています。今後の研究によって、より詳細な毒性メカニズムやヒトへの影響が解明され、より安全な食品生産に繋がる事が期待されます。また、シトリニン汚染を抑制するための効果的な対策も必要不可欠です。

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