シナリオ (TRPG)

TRPGにおけるシナリオとは

シナリオとは、[テーブルトークRPG]において、[プレイヤーキャラクター]たちが体験する冒険の舞台設定、遭遇する事件、そして物語のプロット（要約）などを包括的にまとめた資料のことです。演劇や映画の脚本になぞらえて「シナリオ」と呼ばれますが、TRPGのシナリオでは、ゲームルールに即した記述が付記される点が大きく異なります。

シナリオの概要

シナリオは、[ゲームマスター]がゲームプレイを運営する上で重要な参考資料となります。例えば、モンスターとの戦闘シーンでは、そのモンスターのゲーム的なデータ（能力値や攻撃方法など）が記載されます。また、PCが巨大な岩に追いかけられるシーンでは、その岩から逃れるための行為判定の方法が明記されます。

TRPGのシナリオは、基本的に特定のTRPGシステムに合わせて作成されます。ただし、使用するTRPGシステムを限定せずに書かれたシナリオでは、ゲームルールに即した記述はほとんど見られません。

シナリオは、ゲームシステムごとに市販されているものもありますが、ユーザーが自作することも可能です。ほとんどのTRPGでは、自作に必要な情報がルールブックに記載されています。TRPGでは、プレイヤーがシナリオの内容を事前に知らない方がより楽しめるため、自作したシナリオを遊ぶ際は、作成者自身がGMを担当することが推奨されます。

シナリオとアドリブ

TRPGでは、PCの予期せぬ行動によって、シナリオのプロット通りに物語が進まなくなることがあります。そのような場合、GMは状況に応じて、シナリオを無視してアドリブで対応するか、可能な限り元のプロットに復帰させるかを選択する必要があります。

例えば、貴族が誘拐された娘の奪還を依頼するためにPCたちとの面会を申し出た際、PCがその場で貴族を殺害してしまうと、「誘拐団との戦い」というシナリオのプロットは意味をなさなくなります。この場合、GMは「殺人犯として衛兵に追われるPCたちの国外脱出」など、新たなプロットを即興で作り上げ、それに相応しいイベントを考案する必要があります。

しかし、貴族殺害後でも、誘拐団が身代金を得られなくなった腹いせにPCを襲撃するという展開にすれば、シナリオを本来の「誘拐団との戦い」に復帰させることができます。また、PCが貴族を殺そうとした時点で、アドリブで強力な護衛騎士を登場させ、PCを捕縛し、貴族の依頼を引き受けることを条件に解放するという展開も考えられます。

シナリオの書式

TRPGのシナリオの記述形式に厳密なルールはありませんが、一般的には以下の内容が含まれます。

冒険の舞台の説明: PCたちが冒険する世界のマクロな設定（国、物理法則など）は、ルールブックやサプリメントに記載されるか、GMが定義します。PCたちが実際に冒険する狭い地域（街やダンジョンなど）の設定は、シナリオ単位で記述されることが多いです。ダンジョンを舞台にする場合はダンジョンのマップ、街を舞台にする場合は街の施設や住人(NPC)の設定などが有用です。
遭遇する事件・出来事の説明: シナリオには、PCたちが遭遇する事件や出来事の内容が記述されます。例えば、「敵のアジトに侵入して誘拐された貴族の令嬢を救出する」というイベントが記述されている場合、その成否によって次に起こりうるイベントが定義されます。令嬢の救出に成功すれば「敵の追っ手がPCのいる町に潜入してくる」、失敗すれば「誘拐団が令嬢を国外に輸送するために逃亡する」といった具合に、事件・出来事同士のつながりがプロットを構成します。

ダンジョンで怪物退治と財宝略奪を繰り返すようなシナリオでも、PCがダンジョンに潜る原因となった事件を設定することで、物語に深みを与えることができます。例えば、「オークの山賊団が村の秘宝を盗んだため、PCたちが村長から依頼を受け、ダンジョンに潜って秘宝を取り返す」という設定だけでも、プレイヤーの物語への没入感は大きく向上します。

TRPGは、PCの行動を完全に予測できないゲームであるため、シナリオ内で詳細なプロットを組み立てても、PCが想定外の行動を取ることがあります。プロットが複雑になるほど、PCが逸脱した際の修正は困難になります。そのため、シナリオ作成においては、柔軟性を持たせることが重要です。

関連項目

ダンジョンアドベンチャー: ダンジョン探索を主目的とするシナリオ
シティーアドベンチャー: 街での探索を主目的とするシナリオ
ウィルダネスアドベンチャー: 野外での冒険を主目的とするシナリオ
キャンペーン (TRPG): 複数のシナリオを連作でプレイする遊び方

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