シナロア・カルテル

シナロア・カルテルの概要

シナロア・カルテル（Cártel de Sinaloa、略称CDS）は、メキシコを拠点とする犯罪組織であり、国内最大の麻薬カルテルとして悪名高い存在です。1989年に、ホアキン・グスマン（通称エル・チャポ）をはじめとする5人のリーダーによって設立されました。シナロア州を本拠地とし、ソノラ州、バハ・カリフォルニア州へと活動範囲を拡大していきました。

組織の変遷

設立当初は5人のリーダーによって運営されていましたが、内部分裂やリーダーの逮捕、死亡などにより組織構造は変化を余儀なくされました。特に、エル・チャポことホアキン・グスマンの存在は大きく、彼の逮捕、脱獄は組織の勢力に大きな影響を与えました。

設立と初期の拡大: 1989年、ホアキン・グスマン、イスマエル・サンバダ・ガルシア、フアン・ホセ・エスパラゴーサ・モレーノ、イグナシオ・コロネル・ビジャレアル、アドリアン・ゴメス・ゴンサーレスの5人が中心となり、シナロア州を拠点に活動を開始しました。
組織の弱体化と復活: 1993年のグスマン逮捕や、1995年のパルマ逮捕により一時的に弱体化しましたが、2001年のグスマン脱獄により再び勢力を盛り返しました。
ナンバー2の死と組織の再編: 2010年7月、ナンバー2であったビジャレアルがメキシコ軍に射殺され、組織は大きな打撃を受けました。その後、グスマンが組織を掌握し、サンバダ・ガルシア、エスパラゴーサ・モレーノとグスマンの4人の息子（オビディオ・グスマン、ホアキン・グスマン・ロペス、ヘスス・アルフレド・グスマン・サラザール、イヴァン・アーキバルド・グスマン・サラザール）が組織を運営するようになったとみられています。
グスマンの逮捕と息子たちの台頭： 2014年2月22日にグスマンが再逮捕され、2015年7月に再び脱獄するも、2016年1月8日に三度逮捕されアメリカで収監されました。グスマンが収監された後は、彼の4人の息子たちが組織を運営しているとされています。

エル・チャポと逮捕劇

エル・チャポことホアキン・グスマンは、シナロア・カルテルの象徴的な存在であり、その逮捕と脱獄は常にメディアの注目を集めてきました。2001年に脱獄した後も、2014年に再逮捕されましたが、2015年に再び脱獄し、最終的に2016年に再逮捕されました。彼の逮捕劇は、メキシコ国内だけでなく国際的にも大きなニュースとなりました。

現在のシナロア・カルテル

現在、シナロア・カルテルはグスマンの息子たちによって運営されていると見られています。彼らは、父親の築いた麻薬帝国を引き継ぎ、組織を維持しようとしています。しかし、その一方で、メキシコ政府やアメリカ政府による取り締まりも強化されており、組織の将来は不透明です。

組織に対する国際的な動き

アメリカ政府とメキシコ政府は、シナロア・カルテルの主要メンバーを指名手配し、多額の懸賞金をかけて行方を追っています。特に、イスマエル・サンバダ・ガルシアにはアメリカ国務省により最大1500万ドル、他の5人には最大500万ドルの懸賞金がかけられています。これらの動きは、国際社会がシナロア・カルテルを脅威とみなし、その解体を望んでいることを示しています。

クリアカンでの事件

2019年10月17日、メキシコ国家警備隊は、メキシコ北西部の都市クリアカンでオビディオ・グスマンを一時拘束しましたが、カルテルの反撃により作戦を中止し、オビディオを釈放しました。この事件は、シナロア・カルテルの組織力と影響力の大きさを改めて示すものでした。

まとめ

シナロア・カルテルは、メキシコにおける犯罪組織の中でも特に大きな影響力を持つ存在です。設立から現在に至るまで、組織の変遷やリーダーの逮捕劇、抗争など様々な出来事がありましたが、その勢力は未だ衰えていません。メキシコ麻薬戦争における重要な要素として、今後の動向が注目されています。

関連情報：メキシコ麻薬戦争

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