シネマノヴェチェント

神奈川県横浜市西区に所在する、個性的なミニシアターです。この映画館は、かつて川崎市麻生区でバーを併設したミニシアター「シネマバー・ザ・グリソムギャング」（2003年～2013年11月）を運営していた箕輪克彦氏が、その経験を経て2015年2月に現在の場所で新たに開業しました。

特徴

シネマノヴェチェントの最大の特徴は、フィルムによる上映に並々ならぬ情熱を注いでいる点です。最新のデジタルプロジェクターに加え、35ミリ、16ミリ、8ミリといった各種のフィルム映写機を備え、可能な限りオリジナルのフィルム素材での上映を実現しています。これにより、旧作や貴重な作品を、制作当時の質感を伴って鑑賞できる機会を提供しています。

上映プログラムの編成は、支配人である箕輪氏のキュレーションによるもので、その幅広さが際立ちます。メジャー配給会社の新作映画はもちろんのこと、インディペンデント映画、特撮作品、国内外の不朽の名作、さらには過去のテレビアニメシリーズや劇場用アニメーションなど、多岐にわたるジャンルから選ばれます。一般的な映画館とは一線を画す、独自の視点に基づいた企画上映が数多く行われています。

また、自社で映画の配給を手がけることもあり、例えばイギリス映画の「ファイナル・オプション」や「恐るべき相互殺人」といった作品の日本配給権を取得し、自身の劇場で紹介しました。邦画のリバイバル上映にも熱心で、和泉聖治監督作「オン・ザ・ロード」を新たに35ミリフィルムでプリントし直し、劇場で再上映した実績があります。

上映後には、作品に関わった映画監督や出演者らを招いたトークショーなどのイベントが頻繁に開催されます。時には、併設のトラットリアにおいて、ゲストを交えた懇親会が催されることもあり、観客がより深く作品世界に触れる機会を提供しています。期間限定で35mm映写技師体験講座を行うなど、映画文化の担い手を育成する活動にも積極的です。

設備

館内は1スクリーン構成で、客席数はシネマシート28席にエクストラシート3席を加えた計31席と、小規模ながら親密な空間です。特筆すべきは、客席のシネマシートが、惜しまれつつ閉館した吉祥寺バウスシアターで実際に使用されていたものを譲り受けて設置されている点です。スクリーンはStewart ULTRAMATTE200を使用し、シネマスコープ（2,868×1,200mm）、ビスタサイズ（2,310×1,250mm）、スタンダードサイズ（1,770×1,300mm）など、様々な画面サイズに対応します。

映写機としては、フィルム上映のために35ミリ映写機（CINEMECCANICA;V5-B-4000m）、16ミリ映写機（ELMO;LX-2200）、8ミリ映写機（ELMO;ST-600）といった多様な機種を完備。さらに、ブルーレイディスクプレーヤーや液晶プロジェクターも備え、デジタル上映にも対応しています。字幕表示にはホワイトラインJS01システムを導入。音響システムはSRD5.1チャンネルに対応し、JBL製のサラウンド用スピーカー（6台）、フロント用スピーカー（2台）、サブウーファー（1台）で構成されています。イベント用の設備として、有線マイク（3本）、8チャンネルミキサー（1台）、アンプ内蔵スピーカー（1台）も用意されています。

併設施設

劇場に隣接してトラットリア（バー＆レストラン）が併設されています。着席スタイルで30名、立席スタイルで35名まで収容可能で、映画鑑賞の前後で食事やドリンクを楽しむことができるほか、特別イベント時にはゲストを囲んだ懇親会の会場としても利用されます。

交通アクセス

公共交通機関でのアクセスが便利です。電車を利用する場合、京浜急行電鉄本線「戸部駅」または相模鉄道本線「西横浜駅」からそれぞれ徒歩でおよそ10分です。横浜市営地下鉄ブルーライン「高島町駅」からも徒歩約15分圏内です。複数の横浜市営バス路線が利用可能な「西前町」「藤棚」「西区総合庁舎入口」「御所山」といったバス停からも徒歩圏内に位置しています。専用の駐車場はありません。

館名由来

「シネマノヴェチェント」の「ノヴェチェント」（Novecento）は、イタリア語で「20世紀」を意味する言葉です。映画史において、20世紀はフィルムが主流であった時代であり、その時代への敬意を込めてこの名前が付けられたと推測されています。また、著名な映画監督ベルナルド・ベルトルッチの代表作「1900年」の原題も「Novecento」です。

2015年 2月7日の開館以来、シネマノヴェチェントは横浜の地で、フィルム上映を核とした独自の文化を発信し続けている映画館です。

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