シハーブッディーン・ヤフヤー・スフラワルディー

シハーブッディーン・ヤフヤー・スフラワルディーの生涯と思想

生涯

シハーブッディーン・ヤフヤー・スフラワルディー（1154年頃 - 1191年頃）は、12世紀イスラーム圏の重要な哲学者です。彼の出身はスフラワルド村で、若き日にマラーガでマジドッディーン・ジーリーに学びました。続いてイスファハーンでザヒールッディーン・ファーリスィーの元で哲学や神学、科学を深めることになります。また、海を渡ってアナトリア半島に向かい、多くのスーフィーと出会い、スーフィーとしての修行も修めました。

1183年、スフラワルディーはサラーフッディーンがアレッポの町を奪還した時に、アレッポに移り住み、スンナ派シャーフィイー法学派の一員として名を馳せます。その後、彼はマリク・ザーヒル・ガーズィーの庇護を受けるようになりました。しかし、彼の主要な著作である『照明の哲学』を以て、宗教的権威との軋轢が生まれ、最終的にスフラワルディーは1191年か1192年に獄死します。彼の死因は政治的または宗教的な圧力によるものとされており、詳細は不明ですが、彼の著作の内容が異端視された可能性もあります。

思想

スフラワルディーは、イスラーム圏における知識の主流であったアヴィセンナ・ペリパトス学派に対して独自の批判を展開しました。特にアリストテレスの影響を受けながら、彼はプラトン主義を重視し、独自の「照明の理論」を打ち立てました。この理論の中では、知識の性質や存在の本質について深く掘り下げ、光の概念が重要な役割を果たしました。

スフラワルディーによれば、彼が提唱する「光」は最も顕在するもので、他の何かに依存しない存在とされています。この光が、本質、知性、霊魂、物質といった存在を創出する源であり、神はその究極の光の源泉とみなされています。異なる光の存在が相互に影響しあい、全ての存在がこの光を通じて繋がるという視点は、彼の哲学の根底を成しています。

具体的には、スフラワルディーは「至上の光」から「至大の光」、「支配者の光」となる一連の存在の関係を詳述しながら、宇宙の秩序や存在の生成を説明しました。彼の哲学は、イランの古代叡智やプラトンの影響を受けながら、非常に独自の展開を見せ、西洋哲学とも対比される重要な位置を占めています。

主要な著作

スフラワルディーはアラビア語とペルシャ語で約50の作品を残しており、その中には教理的な論文や寓話、詩、クルアーンやハディースに関する注解などが含まれます。特に代表的な作品には『照明の叡智の書』や『暗示の書』、『対話の書』などがあり、彼の哲学的思想を知るための重要な文献とされています。

彼の著作は、イランや中東では長らく研究され続け、20世紀中頃からアンリ・コルバンによって西洋にも広まりました。その影響は、哲学や宗教思想の分野において今なお脈々と続いています。スフラワルディーの多面的な思想は、哲学だけでなく、宗教的な対話や人間の存在についての理解にも大きな影響を与えてきました。

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