シハーム・シュライテフ

シハーム・シュライテフと北朝鮮の拉致事件

シハーム・シュライテフは、1978年のレバノンで発生した女性拉致事件の被害者であり、彼女の運命は波乱に満ちています。シュライテフは1956年または1957年に生まれ、当時21歳の若さで、北朝鮮に拉致されました。彼女はレバノンの首都、ベイルートで「日本での仕事」の名目で騙され、北朝鮮へ連れて行かれることになります。

拉致事件の発端

1978年の夏、キリスト教女子青年会（YWCA）の秘書学院に、2人の東洋人が現れました。彼らは日本の日立製作所の関係者を名乗り、美しい未婚の女性を求めていると告げました。この言葉に飼いならされ、数名の女性が応募し、その中から選ばれた4人は、実際には北朝鮮への誘拐のために、ベオグラード経由で連れ去られました。彼女たちは、拉致された事実をすぐに理解しましたが、祖国に帰りたいと何度も訴えるも、その願いが無視され続けました。

脱出とその後

1979年、2名の女性がベオグラードで脱出に成功し、彼女たちの証言により、それまでの状況が明るみになりました。この事件はレバノン全土での注目を集め、メディアは連日この問題を取り上げ、世論が高まる中、レバノン政府は北朝鮮に抗議しました。その結果、残った2人の女性、シハームとハイファ・スカフは1979年11月に解放されましたが、シハームはすでにアメリカ人脱走兵、ジェリー・パリッシュとの結婚を選ぶことになります。彼女は妊娠し、イスラム教の教えに従うため、再び北朝鮮に戻る道を選んだのです。

北朝鮮での生活

北朝鮮での生活は、シュライテフにとって新たな現実でした。彼女はジェリー・パリッシュとの間に3人の息子をもうけ、1980年代を通じて夫と共に生活しました。家族同士は交流を深め、互いの子どもたちは共に育ち、賑やかな日々を送ることとなりました。彼女は数年に一度、レバノンやイタリアにいる母親の元へ里帰りする特別な許可を得ていたため、家族との絆を保ち続けることができました。

シハームの母の思い

シハームの母、ハイダールは、娘が再び北朝鮮に戻る選択をしたことに深い悲しみを抱えていました。彼女は、北朝鮮の状況を正しく理解していなかったことを悔やみ、もし彼女がその国の現実を知っていれば、異なる決断を下させたかもしれないと考えています。特に、穏やかな育成環境のもとで、子どもたちが元気に育っていることには安堵感もあったのです。

最後に

シハーム・シュライテフの物語は、個人の自由と国家の意向の間で揺れ動く苦悩を表しています。シュライテフは母国レバノンと北朝鮮という二つの異なる文化の狭間で、愛する家族と共に生きる道を選びました。その体験は、知識と経験が交錯する中で、何が本当に大切かを問い直す機会でもありました。彼女の人生は今日の私たちに様々な教訓を与えてくれます。

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