シバーム

シバームは、イエメンのハドラマウト地方に位置する歴史的な都市で、その独特な景観から「砂漠のマンハッタン」とも呼ばれています。この都市は、かつてハドラマウト王国の首都として栄え、その歴史は2000年以上にも遡ります。シバームの最大の特徴は、泥煉瓦で建てられた高層住宅群です。これらの建物は、5階から9階建てにも及び、その数は500以上にもなります。

これらの高層住宅が建設された背景には、この地域特有の自然環境と歴史的背景があります。ハドラマウト地方は、雨季には洪水が頻繁に発生し、また遊牧民の襲撃も絶えませんでした。そのため、人々は互いに協力し、このような高層建築を築き、防御的な役割も担わせていたのです。建物間には連絡橋が設けられ、住民は自由に往来できるようになっています。

シバームの歴史は古いものの、現存する高層建築群は、ほとんどが16世紀以降に建設されたものです。また、この都市は過去数世紀の間に何度も破壊と再建を繰り返してきました。2008年には、豪雨による洪水で地盤が緩み、一部の建物が倒壊するなど、深刻な被害を受けました。このため、2015年にはユネスコの世界遺産委員会により、危機にさらされている世界遺産（危機遺産）リストに加えられることとなりました。

シバームは、その独特の都市景観と歴史的価値が評価され、1982年にユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準は以下の通りです。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
* (5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。

近年では、シバームの景観がビデオゲームにも使用されていることが明らかになり、新たな注目を集めています。特に、任天堂のゲームソフト『スーパーマリオ64』のワールド11「みずびたシティー」のスカイボックスには、シバームの風景が採用されており、ゲームファンにとっては見覚えのある景観となっています。

シバームは、その歴史的、文化的な価値だけでなく、現代のエンターテイメントの世界にも影響を与えていると言えるでしょう。この古都の保護と保全が、今後も重要な課題であり続けることに変わりはありません。

シバームの街並みは、泥煉瓦で築かれた高層建築が林立し、まるで砂漠の中に現れた巨大な要塞都市のようです。これらの建物は、独特の美しさと歴史的な価値を持ち合わせています。しかし、その一方で、気候変動や自然災害、そして都市化の波など、さまざまな脅威にさらされている現実も無視できません。

シバームの未来は、その歴史的な遺産をいかに守り、次世代に伝えていくかによって大きく左右されます。世界遺産としての価値を再認識し、適切な保護対策を講じることが、シバームの存続には不可欠です。

この都市を訪れる人々は、その歴史と文化に触れることができるでしょう。しかし、同時に、その歴史と文化が、私たち人間が抱えるさまざまな課題と向き合っているという現実も知る必要があるでしょう。

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