シモン・アモール

1979年 4月25日生まれ、イングランド出身のラグビー指導者、シモン・アモール（Simon Amor）。現在は、7人制ラグビーの日本代表チームにおいて、男女双方のテクニカルディレクターという要職を務めている。その名は日本語で「サイモン・エイモー」と表記される場合もある。

経歴

選手時代

イングランドの首都ロンドン近郊、キングストン・アポン・テムズ区で生を受けたシモン・アモールは、現役の選手としては、スクラムハーフ（SH）やスタンドオフ（SO）といった、ゲームメイクの要となるポジションでプレーした。正確なパスワークや戦術眼が求められるこれらのポジションで、その能力を遺憾なく発揮した。

所属クラブは多岐にわたり、イングランド国内の有力チームを渡り歩いた。伝統あるグロスター、強豪として知られるロンドン・ワスプス、そしてロンドン・スコティッシュFCなど、様々なチームでプレー経験を積んだ。

特に、7人制ラグビーにおいては、選手として輝かしい実績を残している。スピードと判断力が重要視されるこの競技形式で、イングランド代表の中心選手として活躍し、チームのキャプテンを務めるなど、リーダーシップも発揮した。

選手としてのハイライトの一つは、2004年のワールドラグビー最優秀男子セブンズ選手賞の受賞だろう。この賞は、7人制ラグビーにおけるその年の世界最高の選手に贈られる栄誉であり、アモールは、この賞が創設された記念すべき年に、最初の受賞者としてその名を刻んだ。これは、彼が当時の世界のセブンズシーンにおいて、いかに傑出した存在であったかを証明するものである。

指導者時代

選手生活にピリオドを打った後、シモン・アモールは指導者の道へ進み、新たなキャリアをスタートさせた。その手腕はすぐに注目を集め、2013年には、自身も主将として活躍した経験を持つ7人制イングランド代表のヘッドコーチ（HC）に就任した。

指導者としてのキャリアにおいて、最も特筆すべき実績の一つは、2016年のブラジルのリオデジャネイロで開催された夏季オリンピックでの采配だろう。アモールは、この大会に出場する7人制ラグビーのイギリス代表チームのヘッドコーチを兼任した。異なる所属の選手たちを短期間で一つのチームとしてまとめ上げ、強豪国を相手に快進撃を見せたチームは、決勝まで進出し、見事に銀メダルを獲得した。これは、オリンピックにおけるラグビーの歴史に刻まれる快挙であり、アモールの指導者としての手腕が高く評価された瞬間であった。

オリンピックでの成功後も、イングランドのラグビー界で重要な役割を担う。2020年からは、15人制のイングランド代表チームに加わり、アタックコーチとしてチームの攻撃戦術を担当した。世界のトップレベルが集まる代表チームでの指導は、彼にとって新たな挑戦となったが、その役職は翌年には退任することとなった。

イングランド代表でのコーチングを経て、その後は香港代表での経験を積んだとされている。そして、2021年、シモン・アモールは極東の地である日本のラグビー界に活躍の場を移すこととなった。日本ラグビーフットボール協会は、7人制ラグビーの強化を図るため、世界的な実績を持つアモールを招聘。7人制ラグビーの男女日本代表チームを統括するテクニカルディレクターとして迎え入れられた。この役職は、単にチームの指導にあたるだけでなく、育成システムの構築や強化プログラム全体の企画・実行など、日本のセブンズラグビーの未来を担う重要な役割である。世界を知るアモールの経験と手腕に対する期待は大きい。

現役時代に世界の頂点を極め、指導者としてもオリンピックでのメダル獲得に貢献したシモン・アモールは、現在、日本の7人制ラグビーの発展に向けてその情熱を注いでいる。彼のこれまでの経験が、日本の若い才能の育成やチーム力の向上にどのように結びついていくのか、今後の動向が注目される。

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