シャルル・ファブリ

シャルル・ファブリ

シャルル・ファブリ（Charles Fabry, 1867年6月11日 - 1945年12月11日）は、フランスの傑出した物理学者であり、天文学者でもありました。彼の研究は光学分野を中心に多岐にわたり、特に精密な分光測定技術の発展と、地球大気の組成に関する理解に大きく貢献しました。マルセイユに生を受け、その地で研究者としてのキャリアをスタートさせました。

生涯と業績

初期研究とファブリ・ペロー干渉計の開発

1894年、ファブリは故郷のマルセイユ大学に研究者として加わりました。彼は当初から光の干渉現象に強い関心を持ち、その精密な測定方法の開発に没頭しました。この探求の中で、1899年には同僚であった物理学者アルフレッド・ペロー（Alfred Perot）と共同で、画期的な光学測定器を開発しました。これが後に彼らの名を冠して「ファブリ・ペロー干渉計」と呼ばれるようになった装置です。この干渉計は、2枚の平行で半透明な鏡の間で光を多重反射させることで、極めて分解能の高い分光観測を可能にしました。これにより、光源のスペクトル線を非常に鋭く分離して観測できるようになり、物理学や天文学における精密測定の精度を飛躍的に向上させました。

オゾン層による紫外線吸収の発見

ファブリの重要な業績は、ファブリ・ペロー干渉計の開発だけにとどまりませんでした。彼は、この装置やその他の分光技術を駆使して、太陽や恒星から届く光のスペクトルについて詳細な研究を進めました。その過程で、地球の大気上層部が太陽光に含まれる特定の波長、特に紫外線を強く吸収していることを発見しました。さらに研究を進めた結果、この紫外線吸収の原因が大気上層に存在する微量のオゾン（O₃）であることを突き止めました。この発見は、地球大気の組成とその働き、特に生物にとって有害な紫外線から地表がどのように守られているのかを理解する上で、極めて重要なものでした。彼の研究は、その後の大気物理学や気象学、さらには環境科学といった幅広い分野の発展に貢献しました。

後期の活動と貢献

ファブリは研究者としてだけでなく、教育者としても多大な影響を与えました。1921年にはフランスの高等教育の中心であるソルボンヌ大学の教授に招聘されました。また、この頃に設立された光学に関する重要な研究・教育機関である光学研究所（l'Institut d'optique）および高等光学学校（l'Ecole superieure d'optique）の初代所長を務め、フランスの光学分野の研究者や技術者の育成に力を尽くしました。彼の指導のもと、これらの機関は光学研究の拠点として発展していきました。

ファブリは自身の研究成果や光学分野の知見を多くの著書にまとめました。主なものに、光学干渉の応用について詳細に解説した『Les applications des interférences lumineuses』（1923年出版）、そして物理学と天体物理学の広範なトピックを扱った『Physique et Astrophysique』（1935年出版）などがあります。これらの著作は、当時の研究者や学生にとって貴重な教科書・参考書となりました。

受賞

シャルル・ファブリの卓越した研究功績は、国内外で高く評価されました。彼はその生涯において、様々な権威ある賞を受賞しています。

1918年：ランフォード・メダル（英国王立協会）
1919年：ヘンリー・ドレイパー・メダル（米国科学アカデミー）
1921年：フランクリン・メダル（フランクリン協会）
1929年：ジュール・ジャンサン賞（フランス天文学会）

これらの受賞歴は、彼の業績が物理学と天文学の両分野において、国際的に認められていたことの証です。

シャルル・ファブリは、ファブリ・ペロー干渉計という画期的な装置の発明、そしてオゾン層による紫外線吸収という重要な地球科学的発見を通じて、科学史にその名を刻んでいます。彼の研究は、現代の分光学、大気物理学、そして天文学の礎の一つとなっています。

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