シャルロッテ・フォン・シュタイン

シャルロッテ・アルベルティーネ・エルネスティーネ・フォン・シュタイン（Charlotte Albertine Ernestine von Stein, 1742年12月25日 - 1827年1月6日）は、18世紀後半から19世紀初頭にかけてドイツの文化都市ヴァイマールで知られた貴婦人であり、文人でもあった。「フォン・シュタイン夫人」としても広く認識されている彼女は、ヴァイマール公国のフォン・シュタイン男爵夫人として、特に文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテとの長きにわたる親密な交友で後世に名を残すことになる。彼女の存在は、ゲーテを始め、フリードリヒ・フォン・シラーやヨハン・ゴットフリート・ヘルダーといったヴァイマール古典主義を代表する作家たちにも大きな影響を与えた。

彼女は1742年、ザクセン＝アイゼナハ公国のアイゼナハに生まれた。父はヴァイマール公国の主馬頭を務めるヨハン・ヴィルヘルム・クリスティアン・フォン・シャルト、母はコンコルディア・エリーザベト・フォン・シャルト。彼女は二番目の子供であった。幼い頃から教育を受け、16歳でヴァイマール宮廷に仕え、アンナ・アマーリア公妃の侍女となった。1764年、同じく主馬頭のゴットロープ・エルンスト・ヨジーアス・フリードリヒ・フォン・シュタインと結婚し、フォン・シュタイン夫人となった。夫との間には三人の子供が生まれた。

シャルロッテの人生において特に重要な転機となったのは、1775年にゲーテがヴァイマールを訪れたことである。当時、若き文学者として名を馳せていたゲーテは、カール・アウグスト公に招かれてこの地にやってきた。程なくして彼はフォン・シュタイン夫人と出会い、その人間的な魅力と知性に強く惹きつけられた。ゲーテは彼女を「教養高く、誠実で繊細、そして誰からも愛される人物」と評し、熱烈な感情を抱くようになった。二人の間には深い精神的な結びつきが生まれ、ゲーテは夫人へ向けて多くの詩や手紙を書き送った。彼らの親密な交流はヴァイマールの宮廷でも広く知られていた。

この関係は、ゲーテの人間的な成長を促すと同時に、彼の文学的な発展にも決定的な影響を与えた。初期の情熱的なシュトゥルム・ウント・ドラング（疾風怒濤）時代を経て、ゲーテの作風がより穏やかで形式を重んじる古典主義へと移行していく上で、フォン・シュタイン夫人との交流は重要な要素の一つであったと考えられている。ゲーテからの熱烈なアプローチは、彼が突然イタリアへと旅立つ1786年までの約11年間続いた。このイタリア旅行の一因として、夫人との関係の複雑さから一時的に距離を置きたかったためではないか、という説も存在する。

1788年にゲーテがイタリアから帰国した後、二人の関係は以前のような熱を失い、やや冷え込んだものとなった。関係が回復し、再び穏やかな友人としての交流が始まるまでにはしばらく時間を要した。この時期、ヴァイマールに滞在していたもう一人の大詩人、フリードリヒ・フォン・シラーとも親交を結んだ。フォン・シュタイン夫人はシラーの結婚を側面から支援し、シラーもまた彼女の優れた人間性を高く評価した。

しかし、私生活では不幸も相次いだ。1790年には父が、1793年には夫であるシュタイン男爵が死去した。相次ぐ近親者の死に加え、ゲーテとの関係性の変化も重なり、当時の彼女は深い悲しみと孤立感を抱いていたとされる。この心の痛みは、1794年に執筆された悲劇『ディードー』に昇華された。カルタゴの女王ディードーの悲劇を描いたこの作品は、彼女自身の内面的な葛藤を反映していると考えられている。

晩年、フォン・シュタイン夫人はゲーテとの共通の友人であり詩人のカール・ルートヴィヒ・クネーベルや、医者で著述家でもあったヨハン・ゲオルク・ツィマーマンといった人々と親しく交わった。老齢による身体的な衰えはあったものの、生涯を通じて知的関心を失うことはなかったという。1827年1月6日、84歳でその生涯を閉じた。ヴァイマールにおける彼女の存在は、単にゲーテの恋人候補としてだけでなく、当時の文化・文学サークルの重要な一員として、また自身も文人として、後世に記憶されている。

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