シャヴィト

シャヴィト：イスラエルの宇宙開発を担うロケット

イスラエル宇宙局(ISA)とイスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)によって開発されたシャヴィトは、人工衛星打ち上げロケットです。その名はヘブライ語で「彗星」を意味し、イスラエルの宇宙開発における重要な役割を担っています。

開発の経緯と特徴

シャヴィトは、1986年に初飛行実験が行われたイスラエル独自開発の準中距離弾道ミサイル「エリコII」を基に開発されました。1988年、オフェク1号の打ち上げに成功し、イスラエルは世界で8番目の人工衛星独自打ち上げ国となりました。

シャヴィトの打ち上げは、周辺諸国への配慮から地中海に向けて西向きに行われます。これは、地球の自転を利用した東向き打ち上げとは異なり、人工衛星の軌道傾斜角が約143度になるという特殊性をもたらします。このため、より広い軌道範囲へのアクセスのため、ブラジルやアメリカ合衆国などの射場も利用されています。また、ロシアからの撤退後、バイコヌール宇宙基地の使用についても検討されています。

ロケットの構成と改良

シャヴィトは、球形固体ロケットモーターを最上段に用いる3段式全段固体燃料ロケットです。基本型であるシャヴィトは、エリコIIに第3段ロケットを追加した構成です。南アフリカ共和国へ輸出されたRSA-3型もありますが、打ち上げられることはありませんでした。

その後、シャヴィト1(LK-A)では、第1段の推力増強と第3段の燃焼パターン変更が行われ、シャヴィト2(LK-1)では、第2段の推力も増強されました。これらの改良によって、軌道投入能力の向上と打ち上げ成功率の向上が図られています。

打ち上げ実績と将来構想

2024年5月時点でのシャヴィトの打ち上げ成功率は83％と高い信頼性を誇ります。

将来構想として、シャヴィト3(LK-2)では、第1段ロケットをATK社製のキャスター120に換装し、高度700kmの極軌道に800kgの衛星を投入できる能力を目指しています。さらに、高精度な軌道投入を可能にする第4段ロケットの追加も検討されています。

また、空中発射型ロケットの開発も構想されており、C-130輸送機やボーイング747といった航空機から発射するALV（Air-Launched Vehicle）の開発が検討されています。

シャヴィトの意義

シャヴィトは、イスラエルの宇宙開発における技術力の高さを示す象徴的な存在です。独自の技術と工夫によって、限られた条件下でも人工衛星の打ち上げを成功させており、今後もイスラエルの宇宙開発を支える重要な役割を果たしていくことでしょう。西向き打ち上げという制約を克服し、国際協力を通じて宇宙への道を切り開くイスラエルの取り組みは、世界的な注目を集めています。

もう一度検索