シャーマン ファイアフライ

シャーマン ファイアフライ：ティーガー撃破の戦車

第二次世界大戦中、北アフリカやイタリア戦線でイギリス軍は、ドイツ軍の強力な戦車、特にティーガーI型に対し苦戦を強いられました。既存のイギリス戦車の主砲ではティーガーI型の重装甲を貫通することが困難だったのです。この状況を打破するため、イギリス軍は強力な17ポンド対戦車砲の搭載を急ぎました。しかし、既存のイギリス戦車には砲塔のサイズに制約があったため、17ポンド砲を搭載できる戦車は存在しませんでした。

そこで目をつけたのが、アメリカ製のM4シャーマン戦車でした。シャーマン戦車はイギリス軍でも広く運用されており、信頼性も高かったため、改造による17ポンド砲の搭載が検討されたのです。1943年、ウィスリッチ少佐の提案を受け、シャーマン戦車への17ポンド砲搭載計画が承認されました。この計画によって誕生したのが、シャーマン・ファイアフライです。

開発と生産

ファイアフライの開発は迅速に進められましたが、生産は容易ではありませんでした。シャーマン戦車への改造は複雑であり、当初はM4A4シャーマンをベースに改造が行われましたが、後にM4シャーマンもベース車両となりました。ノルマンディー上陸作戦に間に合わせるため、生産は急がれましたが、それでも十分な数が間に合ったとは言えず、終戦までに2,139輌が完成したと言われています。

アメリカ軍では、シャーマン戦車の主砲を強化することに消極的な姿勢を取っていました。そのため、17ポンド砲の供給もイギリス軍に頼ることとなり、供給不足も問題となりました。しかし、ノルマンディー上陸作戦以降の激戦で、強力な対戦車能力を持つ戦車の必要性が認識され、アメリカ軍もファイアフライの採用を決定しました。

ファイアフライの改良点

17ポンド砲を搭載するため、シャーマン戦車には様々な改修が加えられました。砲塔後部にはカウンターウェイト兼用の装甲ボックスが追加され、無線機が収納されました。長砲身による砲塔の重量バランスを調整するためです。また、砲身の反動を吸収する機構の変更に伴い、装填手のハッチも追加されました。弾薬庫の配置も変更され、誘爆のリスクを軽減する工夫が凝らされました。これらの改修により、ファイアフライは従来のシャーマン戦車よりも優れた対戦車能力を持つようになりました。

運用と戦果

ファイアフライはノルマンディー上陸作戦以降、主に西部戦線で運用されました。その強力な17ポンド砲はドイツ軍戦車にとって大きな脅威となり、ドイツ軍からは最優先で撃破すべき目標とされました。しかし、ファイアフライは通常のシャーマン戦車と同様に、装甲が薄弱であるため、近距離での戦闘を余儀なくされ、待ち伏せ攻撃や、遭遇戦での損害も発生しました。そのため、ファイアフライは駆逐戦車のように運用されることが多く、75mm砲搭載のシャーマン戦車が先行し、敵戦車を発見したらファイアフライが攻撃するという連携が行われました。

ファイアフライの戦果として特に有名なのは、ドイツの戦車エース、ミハエル・ヴィットマンのティーガーI型を撃破したことです。この戦いはファイアフライの威力を世界に知らしめることとなりました。

戦後

第二次世界大戦後、ファイアフライはイギリス軍から退役し、ヨーロッパ諸国へ供与されました。その後、1950～70年代にはレバノン内戦で使用された記録も残っています。レバノンで使用されたファイアフライは、エンジンや主砲を換装するなど、様々な改造が施されていました。また、アルゼンチン軍もファイアフライを独自改良し運用していました。

愛称の由来

ファイアフライという愛称は、17ポンド砲の発射時の強烈な砲火炎と煙に由来します。まるでホタルのように明るく光る様子から、この愛称が付けられたと言われています。

登場作品

シャーマン・ファイアフライは、多くのゲームやアニメなどに登場しており、第二次世界大戦を題材とした作品では、その存在感を示しています。特に『ガールズ＆パンツァー』では、サンダース大学付属高校の戦車として登場し、人気を博しています。

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