シュベツォフ M-25

シュベツォフ M-25：ソ連航空エンジン開発の礎

シュベツォフ M-25は、1930年代から1940年代にかけてソビエト連邦で製造された航空機用エンジンです。アメリカ合衆国のライト R-1820-F3 サイクロンエンジンをライセンス生産したもので、空冷9気筒星型という特徴を持っています。初期のモデルはR-1820とほぼ同一でしたが、後にソ連のメートル法に合わせて設計が変更されました。

開発と製造

M-25の製造は、ペルミやカザンの工場で行われました。総計13,888基が完成し、ソ連の航空戦力増強に大きく貢献しました。

設計

M-25は、空冷星型9気筒エンジンで、排気量は29.876リットルです。乾燥重量は499kg、圧縮比は6.4でした。燃料供給はキャブレター式で、遠心式スーパーチャージャーを1段1速で装備していました。出力は型式によって異なり、700から800馬力を発揮しました。

ソ連航空エンジン開発への影響

M-25は、その後のソ連における星型空冷エンジン開発の基礎となりました。M-25を直接改良したASh-62、複列14気筒化したASh-82、複列18気筒化したASh-73、7気筒型のASh-21など、数多くの派生型が開発され、大量生産されました。これらのエンジンは、第二次世界大戦におけるソ連軍の航空機を支え、戦後の航空産業の発展にも寄与しました。

スペック詳細

タイプ: 空冷星型9気筒
ボア×ストローク: 155.6mm×175mm
排気量: 29.876L
乾燥重量: 499kg
圧縮比: 6.4
燃料供給方式: キャブレター式
過給機: 遠心式スーパーチャージャー1段1速
出力: 700-800hp（型式による）

搭載機

M-25は、以下のソ連の航空機に搭載されました。

ネーマン R-10
ポリカルポフ I-14
ポリカルポフ I-15 bis
ポリカルポフ I-153
ポリカルポフ I-16

まとめ

シュベツォフ M-25は、ソ連の航空エンジン開発において重要な役割を果たしたエンジンです。アメリカの技術を導入しつつ、ソ連独自の改良を加えて発展させ、数々の派生型を生み出しました。その遺産は、現代の航空産業にも影響を与え続けています。

参考資料

Gunston, Bill (1986). World Encyclopedia of Aero Engines. Wellingborough: Patrick Stephens. pp. 175
* Kotelnikov, Vladimir (2005). Russian Piston Aero Engines. Crowood Press Ltd.. pp. p.118-119

もう一度検索