シュモクバエ

シュモクバエとは

シュモクバエ（撞木蝿）は、ハエ目シュモクバエ科に属する昆虫の総称です。その最大の特徴は、まるでハンマーヘッドシャークのように、左右に長く突き出した眼にあります。この独特な外見から「撞木（しゅもく）」の名が付けられました。世界には約160種が生息しており、その多様な生態が研究されています。

分布

シュモクバエは、主に旧大陸の熱帯地域に分布しています。特にアフリカには多くの種が生息しており、その数は約100種にのぼります。一方で、南米のアマゾンなどの新熱帯区ではほとんど見られず、北アメリカで1種が確認されている程度です。ヨーロッパでは、ハンガリーでSphyracephala europaeaという種が記録されています。日本においては、沖縄県でヒメシュモクバエ Sphyracephala detrahens が確認されており、八重山諸島以南から東南アジアにかけて分布しています。

特徴

シュモクバエの仲間（Centrioncinae亜科を除く）は、成虫になると雌雄ともに左右に長く伸びた眼柄を持つようになります。この眼は、周囲を広く見渡したり、獲物との距離を測ったりするために役立つと考えられています。ミバエ科やショウジョウバエ科、ヒロクチバエ科にも同様に眼が長く伸びる種がいますが、シュモクバエ科の場合は触覚が複眼のすぐ近くに生えるため、容易に区別できます。

この特異な形態から、シュモクバエは古くから性淘汰の研究に利用されてきました。多くの種で眼の長さに性的二形が見られ、マレーシアに生息するTeleopsis dalmanniの研究では、より長い眼を持つオスがメスに選ばれやすく、他のオスとの競争にも強いことが示唆されています。また、目の長さがオスの強さを示す指標となり、ハンディキャップ理論の説明にも用いられることがあります。

農業においては、シュモクバエはイネを食害する害虫として扱われることがあります。

分類

シュモクバエ科は、11属約160種が記録されています。大きく分けて、長い眼を持たないCentrioncinae亜科と、長い眼を持つDiopsinae亜科の2つに分類され、Diopsinae亜科はさらにSphyracephalini族とDiopsini族に分けられます。Centrioncinae亜科を独立した科 Centrioncidae として扱う考え方もありますが、一般的には亜科として扱われています。

属の一覧

BioLibnによれば2020年までに化石の1属を含む以下の16属が確認されています。

Centrioncus Speiser, 1910
Cladodiopsis Seguy, 1949
Cobiopsis Fejien, 1989
Cyrtodiopsis Frey, 1928
Diasemopsis Rondani, 1875
Diopsina Curran, 1928
Diopsis Linnaeus, 1775
Eosiopsis Feijen, 2008
Eurydiopsis Frey, 1928
Megalabops Frey, 1928
Prosphyracephala W.Hennig, 1965 † （化石属）
Pseudodiopsis Hendel, 1917
Sinodiopsis Fejien, 1989
Sphyracephala Say, 1828
Teleopsis Rondani, 1875
Teloglabrus Feijen, 1983

関連項目

* シュモクザメ - シュモクバエと同じく、頭部の形状が撞木に似ていることに由来する名前を持つサメ。

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