シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢

『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』は、2018年に公開されたフランス映画です。監督はニルス・タヴェルニエ、主演はジャック・ガンブランとレティシア・カスタが務めました。この作品は、実在の人物である郵便配達員ジョゼフ・フェルディナン・シュヴァルが、33年の歳月をかけてたった一人で作り上げた「シュヴァルの理想宮」の建設秘話を描いています。

物語の舞台は19世紀末のフランス南東部、オートリーヴ村。寡黙で人付き合いが苦手な郵便配達員ジョゼフは、最愛の妻を亡くし、息子とも別れて孤独な日々を送っていました。そんな中、未亡人のフィロメーヌと出会い再婚。愛娘アリスが誕生し、ジョゼフは父親としての愛情を深めていきます。ある日、配達中に石につまづいて怪我をしたジョゼフは、その石の奇妙な形に魅せられ、アリスのために石を積み上げて宮殿を作ることを決意します。妻の反対や周囲からの偏見にも負けず、ジョゼフは宮殿づくりに没頭。アリスは宮殿を遊び場として成長し、幸せな日々を送ります。

宮殿の存在が次第に知られるようになると、記者などが取材に訪れるようになります。しかし、幸せな時間は長くは続かず、アリスは15歳という若さで亡くなってしまいます。葬儀で久しぶりに再会した息子シリルは、結婚して娘をもうけており、その娘もアリスと名付けられていました。ジョゼフは、亡き娘と孫娘のために宮殿の建設を継続。その過程で、疎遠だった息子との絆も深めていきます。シリルの勧めで宮殿の絵葉書を販売するようになり、その絵葉書には家族写真が収められています。

建設開始から33年、ついに宮殿は完成します。しかし、直後に息子シリルが急逝。ジョゼフは息子への思いを伝えられなかったことを深く後悔します。その後、妻フィロメーヌも亡くし、家族のために廟の建設を始めます。そして、孫娘アリスの結婚式で、ジョゼフは亡き家族への思いを胸に、幸せを噛み締めます。1924年、ジョゼフは88歳で生涯を閉じました。そして、1969年に「シュヴァルの理想宮」はフランスの重要文化財に指定されました。

この映画では、ジャック・ガンブランが寡黙で不器用ながらも愛に溢れるジョゼフを、レティシア・カスタが温かく彼を支えるフィロメーヌを好演しています。その他、ジョゼフの娘アリス役にはゼリー・リクソン、息子シリル役にはルカ・プチ・タボレーリ、孫娘アリス役にはデルフィーヌ・ラシュトーが出演しています。また、郵便局長のオーギュスト役にはベルナール・ル・コク、ジョゼフの友人ガランス役にはナターシャ・リンディンガーがキャスティングされています。

映画の評価としては、フランスの映画批評サイト「アロシネ」では、17のメディアによる平均評価が5点満点中3.2点となっています。映画評論家の森直人氏は、この作品を「ものづくりに打ち込む父親への敬意が感じられる」と評しています。

映画は、ジョゼフ・シュヴァルの生涯と、彼が作り上げた「シュヴァルの理想宮」を通じて、人間の情熱と家族愛を描いた感動的な物語です。孤独な男が、愛する人のために情熱を注ぎ続けた結果、驚くべき建造物を完成させたという事実は、観る人に深い感動を与えることでしょう。また、家族という普遍的なテーマを描いているため、多くの人の心に響く作品となっています。


公式ウェブサイト（日本語）
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