ショーランナー

ショーランナー：テレビ番組制作における中心的役割

ショーランナーとは、主にアメリカとカナダのテレビ業界で使われる用語で、テレビ番組制作現場の責任者を指します。スタッフロールではエグゼクティブプロデューサーとしてクレジットされるのが一般的ですが、全てのエグゼクティブプロデューサーがショーランナーであるとは限りません。複数の製作総指揮者がいる場合、ショーランナーはその中の1人、もしくは2人であることが多いです。

従来、プロデューサーが製作責任者でしたが、近年は「プロデューサー」の肩書きを持つスタッフが増加し、その役割も多様化しました。そのため、「現場で実際に製作指揮を執る者」を明確に示す必要性から、ショーランナーという表現が生まれたのです。いわば、現場のトップ、ボスと言える存在です。

ショーランナーは、番組全体のビジョン、つまり長期的展望や全体像、青写真などを決定します。物語の世界観、キャラクター設定、細かいストーリー展開に至るまで、ショーランナーのビジョンに基づいて決定されます。謎解きや未公開要素などの重要な情報を最もよく理解しているのもショーランナーであり、そのため、インタビューやオーディオコメンタリーなどにも頻繁に登場します。

多くの場合、番組のクリエイター、つまり企画・考案者、あるいはパイロット版（第1話）の脚本家がショーランナー、もしくは共同ショーランナーとなります。しかし、例外もあり、複数の番組のショーランナーを兼任する者や、何らかの理由で交代するケースも見られます。

ショーランナーの役割：多岐にわたる責任

ショーランナーの仕事は多岐に渡り、芸術的なセンスとビジネス的な感覚の両方が求められます。主な役割としては以下が挙げられます。

番組全体のクリエイティブなビジョンの決定: 世界観、キャラクター、ストーリー展開、全体のトーンなど、番組の核となる部分を決定します。
脚本会議の主導: 脚本会議の内容を統合し、自ら脚本を執筆したり、各エピソードを担当する脚本家に指示を出します。連続ドラマでは、数シーズンに渡る全体的なストーリー展開を決定し、調整します。
製作チームの統率: 製作チーム全体をまとめ、円滑な制作進行を管理します。
予算管理: 製作予算の管理と支出のバランスを保ちます。
キャスティング: 俳優の選定など、キャスティングに関わります。
広報活動: 番組の広報活動にも関わります。
関係者との交渉: 製作会社や放送局など、関係者との交渉や調整を行います。
スタッフの管理: スタッフの雇用や解雇などもショーランナーの役割です。

一言で表すなら、ショーランナーの仕事は「番組を成功させること」です。

ショーランナーの歴史：脚本家の台頭と役割の変化

1950～60年代、テレビ番組制作は製作スタジオが全てを担っていました。脚本家は契約ライターが中心で、番組全体像に関わることは少なかったです。番組の企画・売り込みは経験豊富なスタジオ幹部が行い、チーフプロデューサーが製作指揮を執るのが一般的でした。

しかし、70年代後半頃から、『The Mary Tyler Moore Show』など、脚本家に自由に創作させる試みが開始され、視聴者の要求も変化し、「より深みのあるキャラクターとプロット」が求められるようになりました。

80年代には、『ヒルストリート・ブルース』などのドラマで、番組全体の流れを重視し、スタッフ・ライターを抱える体制が確立されました。脚本家の重要性が増し、製作の仕事も任されるようになり、「writer-executive producer」と呼ばれる、脚本家が自ら番組を企画・制作指揮する体制が生まれたのです。

しかし、「プロデューサー」の数が急増したことで、「番組の現場を仕切り、最終決定権を持つ責任者」を明確にする必要性が生まれ、「ショーランナー」という用語が80年代後半頃に誕生しました。1992年には『バラエティ』誌、1995年には『ニューヨーク・タイムズ』紙が「ショーランナー」という用語を使用し、その役割を明確に説明しています。インターネットの普及に伴い、ショーランナーはメディアで注目を集め、オンライン・コミュニティでも人気を博しました。

ショーランナーの例：企画者とショーランナーの分離

通常、番組の企画者はショーランナー、もしくは共同ショーランナーを務めますが、必ずしもそうとは限りません。企画の変更、クリエイターの降板、多忙による現場離脱、製作会社や放送局との意見の相違、他番組への移行など、様々な理由で企画者とショーランナーが異なるケースがあります。例えば、『LOST』、『ヤング・スーパーマン』、『スーパーナチュラル』などは、企画者とショーランナーが異なる例として知られています。それぞれの番組において、様々な事情からショーランナーが交代したり、共同で担当したりするケースがあり、制作現場の複雑さを物語っています。

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