シリアルデジタルインタフェース

シリアルデジタルインタフェース（SDI）の概要

シリアルデジタルインタフェース（SDI; Serial Digital Interface）は、高品質なデジタル映像と音声を1本の同軸ケーブルで伝送するプロフェッショナルなビデオインターフェース規格です。放送局、映像制作スタジオ、ポストプロダクションなど、高信頼性と高画質が求められる現場で広く採用されています。

SDIの大きな利点は、非圧縮デジタル映像とデジタル音声を、BNCコネクタと75Ω同軸ケーブル1本で伝送できる点です。これにより、複数のケーブルを使用するアナログ方式に比べて、配線が簡素化され、コスト削減や設置スペースの削減に繋がります。また、デジタル伝送であるため、ノイズに強く、信号劣化が少ないというメリットもあります。

さらに、SDIはプラグアンドプレイ方式を採用しているため、接続するだけで信号の送受信が可能で、煩雑な設定が不要です。Point to Point接続でありながら、高い利便性を提供します。最大100mの距離でも実用上無遅延で伝送できるため、放送設備内や中継現場での使用に最適です。

ただし、SDIには様々な規格が存在し、解像度や伝送速度、対応フォーマットなどが異なります。使用する機器や用途に応じて適切な規格を選択する必要があります。

SDIの種類

SDI規格は、解像度や帯域幅に応じて複数の種類があります。代表的な規格を以下に示します。

SD-SDI (SMPTE 259M/ITU-R BT.656): 標準画質映像（SD）に対応。HD-SDIの普及以降はSD-SDIと呼ばれることが多いです。
HD-SDI (SMPTE 292M): 高精細度映像（HD）に対応。1080iや720pなどの解像度をサポートします。
3G-SDI (SMPTE ST 424): 1080pなどの高解像度映像に対応。HD-SDIよりも高い帯域幅を有します。Level AとLevel B-DLの2つのマッピング方式があります。
6G-SDI (SMPTE ST 2081): より高解像度の映像伝送に対応。
12G-SDI (SMPTE ST 2082): 4K解像度に対応。
Dual-Link HD-SDI (SMPTE ST 372): 2本のHD-SDIケーブルを使用して、より高帯域幅の映像伝送を実現します。4:2:2 1080/60pや4:4:4映像に対応します。
Quad-Link 3G-SDI (SMPTE ST 425-5): 4本の3G-SDIケーブルを使用して、4K解像度映像に対応します。
2SI (Two Sample Interleave): 4本の3G-SDIを使用して、4K映像を伝送する方式。伝送遅延が少なく、画像合成が容易です。
* SQD (Square Division): 4本の3G-SDIを使用して、4K映像を伝送する方式。伝送遅延が大きいですが、既存の1080p設備の流用が可能です。

さらに、D-1 SDIやD-2 SDIといった、特定のVTRフォーマットで使用された規格もあります。これらはアナログ規格のコンポーネントやコンポジット信号に相当します。

エンベデッドオーディオ

SDIでは、映像信号とともにデジタルオーディオ信号も同時に伝送できます。この機能をエンベデッドオーディオと呼びます。SD-SDIでは最大8ch、HD-SDIでは最大16chのデジタルオーディオ信号を伝送可能です。エンベデッドオーディオは、SMPTE 272M (SD-SDI)やSMPTE 299M (HD-SDI)などの規格で規定されています。

エンベデッドオーディオはAES/EBUデジタルオーディオ信号をそのまま使用できるため、デジタルオーディオ機器との親和性が高く、高品質な音声伝送を実現します。また、エラー訂正機能やデジタルオーディオ位相情報も含まれるため、長距離伝送でも信頼性の高い音声伝送が可能です。さらに、AES/EBU規格では非音声データ転送も考慮されているため、圧縮オーディオなども使用できます。

SDIケーブル

SDIに使用されるケーブルは、インピーダンス75Ωの同軸ケーブルです。FBケーブル、HDケーブル、FWケーブルなどが一般的に使用されます。FWケーブルは細くて柔軟性が高い一方、伝送可能な距離はFBケーブルよりも短くなります。

特に、長距離伝送を行う場合や、高帯域幅のSDI規格（3G-SDI以上）を使用する場合は、信号劣化を防ぐために、リクロック型中継機器の設置が必要となる場合があります。また、12G-SDIを使用する場合は、低減衰型のケーブルと12G-SDI専用のBNCコネクタを使用する必要があります。

まとめ

SDIは、高画質、高信頼性、そして利便性を兼ね備えたプロフェッショナルな映像伝送規格です。様々な規格が存在し、用途や予算に応じて適切なものを選択することで、効率的で高品質な映像制作環境を実現できます。ただし、長距離伝送や高帯域幅の規格を使用する際は、ケーブルや中継機器の選定に注意が必要です。

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