シリア難民

シリア難民の現状

シリア難民とは、2011年から続いているシリア内戦から逃れるために国外や国内で避難を余儀なくされているシリア人を指します。この内戦は、シリアの歴史的な人口動態を大きく変え、多くの人々が安全な地域を求めて移動しました。内戦開始前のシリアの人口は約2200万人でしたが、戦闘の激化に伴い、少なくとも760万人以上の人々が国内避難民となり、また国外に逃れるシリア人は急増しました。

難民の行き先

2015年の時点で、シリアの人々はトルコ（約180万人）、レバノン（約117万人）、ヨルダン（約63万人）、イラク（約25万人）、エジプト（約13万人）に避難しました。この時点でシリア人難民は全体の半数以上に達し、特にトルコは最も多くの難民を受け入れています。しかし、トルコは難民の受け入れが増えるにつれ、国としての負担が増し、他のEU諸国と支援の枠組みを作ることが求められるようになりました。

ヨーロッパの受け入れ状況

シリアから逃れる難民の中には、経済的に豊かな欧州各国へ移動を目指す人々も多く、2015年には欧州の難民危機が深刻化しました。この年、EU各国はシリア周辺国への援助を通じて難民の移動を抑制しようとしましたが、トルコがいずれの国にも受け入れを閉ざす可能性があるとの懸念から、さらに難民を取り巻く情勢は不安定化しました。

内戦は2020年3月に10年目を迎え、シリア人権監視団は内戦による死者が390,000人以上、難民や国内避難民の数は1,100万人を超えたと報告しています。この状況は人道的な危機を引き起こしており、難民たちは厳しい生活条件に直面しています。

トルコとシリア難民

トルコはシリア内戦の初期から主要な難民受け入れ国であり、2019年までに360万人以上のシリア難民を受け入れました。しかし、国の資源が限られる中で難民の数が増え続け、管理能力を越える状況に直面しました。トルコ政府は、シリアとの国境付近に「安全地帯」を設けるための軍事行動を行うなどして、難民の帰還を試みる一方で、国際社会に対して圧力をかけています。

ヨルダンとシリア難民

ヨルダンには、多くのシリア人難民が生活しており、特にザータリ難民キャンプは有名です。このキャンプは2012年から運営され、当初はテント住居でしたが現在ではコンテナに変わり、一定の居住条件は整備されています。しかし、国の資源を圧迫する存在となっており、難民支援にかかるコストは国家予算の相当部分を占めています。

レバノンとシリア難民

レバノンは、シリアの隣国として難民が多く流入しており、2015年時点で110万人以上がレバノンに避難しています。しかし、政府はビザ制度を導入するなどして受け入れを抑制しようとしていますが、実際には多くの難民が未登録で存在するため、状況を正確に把握することが困難です。経済危機に加え、政治的な対立が続くレバノンでは、難民への支援がますます難しくなっています。

日本とシリア難民

日本では、2018年6月までに81人のシリア人が難民申請を行いましたが、日本政府はその多くを却下しました。最終的に認定されたのは15名のみであり、その他の申請者には特別な在留許可が与えられるものの、本格的な難民受け入れとは言えない状況です。このように、日本は難民問題に対するアプローチが他国と異なっていると言えるでしょう。

シリアの難民問題は、各国の政治、経済、社会に多大な影響を与えており、国際社会全体での協力が求められています。

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