シル・ラ=シャローム

シル・ラ・＝シャローム：平和のための歌

『シル・ラ・＝シャローム』は、1969年に完成したイスラエルの反戦歌で、原題はヘブライ語で「平和のための歌」を意味します。この歌は作詞家ヤアコブ・ロトブリトによって歌詞が書かれ、当時イスラエル国防軍のコーラス隊のディレクターであったヤイール・ローゼンバルムが作曲を手掛けました。歌詞には、戦争の悲惨さや平和への願いが織り込まれています。

しかし、この曲が誕生した当初、イスラエル国防軍においてはそのメッセージが受け入れられず、冷淡な反応があったと言われています。特に、当時の中央司令部に在籍していたレハバム・ゼエビは、曲の演奏を禁止する通達を出しました。このことは、平和を訴えるメッセージがいかに困難な環境で発信されたかを物語っています。

ところが、1978年のエジプトとの和平合意が成立することで、イスラエルの安定化が進みました。このような状況の中、パレスチナ問題が再び注目されるようになり、平和共存を目指すイスラエル国内の団体や市民たちがこの曲を歌い始めました。特に、平和団体「ピース・ナウ」はこの曲を重要なシンボルとして広め、イスラエルの左派に支持されることとなります。

『シル・ラ・＝シャローム』が広く知られるようになったのは、1995年11月4日のことでした。この日に、当時の首相イツハク・ラビンやシモン・ペレスが出席した集会で、この曲が大々的に歌われました。この集会は、パレスチナとの平和共存に向けた重要な出発点とされるオスロ合意を祝うものであり、多くの人々が集まりました。しかし、この集会が終了した直後に、ラビンは極右青年イガール・アミルに暗殺されてしまいます。この出来事によって、曲はますます注目を浴びることになります。

今でも『シル・ラ・＝シャローム』は、イスラエル国内の左派によって歌われ続けており、2012年には「イスラエル・ピース・キャンプ」と呼ばれる平和団体の公式歌として位置付けられています。この曲は単なる音楽作品ではなく、イスラエルにおける平和への願いと、歴史における重要な出来事と結びついているのです。彼らは現在もこの歌を通じて、戦争を終わらせ、平和を呼びかける声を発信し続けています。

そのメッセージは、時代を超えて響き続けるものであり、未来への希望が込められています。今後もこの曲は、平和を求める声として多くの人々に歌い継がれていくことでしょう。

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