シングル・マン (RCサクセションのアルバム)

アルバム『シングル・マン』の軌跡

『シングル・マン』は、1976年4月21日に発売されたRCサクセションの3枚目のスタジオアルバムです。この作品は、彼らが初めて本格的に電気楽器を導入した重要なアルバムでありながら、初期の頃はあまり広く認識されない運命にありました。

制作の背景

本作のレコーディングは1974年に始まりました。その際、ポリドールのディレクター多賀英典のもと、当時RCが所属していたホリプロで秘密裏に進められました。その理由は、RCの元マネージャーである奥田義行が、彼の別のマネージメントを行っていた井上陽水と共にホリプロを離脱したためです。この決断はホリプロを裏切る行為となり、RCに対して厳しい制約が課せられました。

グループは次第に飼い殺し状態となり、ホリプロにおいて十分なサポートを受けられなかったため、レコーディングは極秘に進行しました。星勝をアレンジャーに迎え入れ、電気楽器とブラス楽器を駆使した新しい音作りに挑戦しましたが、忌野清志郎はその一部に対し不満を持っていました。彼は豪華すぎるアレンジを警戒し、以前のアコースティックスタイルに近いものを期待していたと語っています。

不遇の時代

1975年に完成した『シングル・マン』は、ホリプロからの発売許可が下りず、ほぼお蔵入りとなってしまいます。このアルバムが日の目を見るのは、その約1年後です。1976年、RCはホリプロとの契約が切れ、奥田の新しい事務所「りぼん」に移籍してようやく発売にこぎつけました。

しかし、発売当初から様々な困難が立ちはだかりました。1年以上の間活動していなかったためメンバーのモチベーションが低下し、アルバムへの関心も薄れていました。また、ホリプロからのプロモーションも乏しかったため、販売は低迷し、発売後わずか1年で廃盤となりました。

再評価と再発売

1979年、RCサクセションが新たにエレキ編成となり、ライブハウスで注目を集めるようになると、音楽評論家の吉見佑子が中心となり、『シングル・マン』を再び世に出すためのキャンペーンを立ち上げます。「シングル・マン再発売実行委員会」が結成され、実際に自主制作のCDがリリースされました。この運動は大きな反響を呼び、最終的には1980年に正式に再発売される運びとなりました。

再発の際には、ジャケットに過去の不遇を謝罪する内容が記された帯がつけられ、RCサクセションのファンからの支持が大きな力となったことを示しました。

収録曲とその魅力

アルバムには「スローバラード」をはじめとする数々の名曲が収録されています。「ファンからの贈り物」や「大きな春子ちゃん」など、曲それぞれに異なる魅力が詰まっています。特に「スローバラード」は、RCを代表する曲の一つとして知られ、現在でもライブで演奏され続けています。再発された際には、ボーナストラックとして忌野清志郎と坂本龍一の共演による曲が追加され、さらなる注目を浴びました。

結論

『シングル・マン』は、RCサクセションの音楽的進化と多様な試みが詰まった一枚であり、当初の不遇を乗り越えて再評価された歴史を持っています。このアルバムは、彼らの音楽スタイルの変遷を象徴する重要な作品として、今も多くのファンに愛され続けています。

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