シンフォニア・フンガリカ

「シンフォニア・フンガリカ」（イタリア語: Sinfonia Hungarica、ハンガリー語: Magyar Szimfónia）は、ベルギー出身の作曲家ヤン・ヴァン・デル・ローストが2001年に完成させた、吹奏楽のために書かれた交響曲です。日本国内では、「シンフォニア・ハンガリカ」という名称で言及されることも多くあります。

作曲の背景と主題

この作品は、ハンガリーのキシュクンフェーレジハーザ吹奏楽団からの委嘱を受けて誕生しました。作曲された年の2001年には、オランダの出版社デ・ハスケから楽譜が出版され、この楽曲の実現に尽力した指揮者のヤンコヴスキー・フェレンツ氏、当時のキシュクンフェーレジハーザ市長であるフィチョール・ヨージェフ氏、そして楽団代表のキッシュ・ガブリエッラ氏へ献辞が捧げられています。

作曲の重要なインスピレーションとなったのは、ハンガリー王国が建国されてから千年という歴史的な出来事です。ヤン・ヴァン・デル・ローストは、ハンガリー建国の物語に登場する三人の重要な王たちを主題として選びました。楽曲全体にわたり、ハンガリーの国歌で用いられる旋律が、様々な形で引用され、あるいは暗示的に姿を現すことで、作品に統一感と深い民族的な色彩を与えています。

全曲を通しての演奏時間は、およそ38分程度です。

初演

「シンフォニア・フンガリカ」の世界初演は、2001年3月末から4月初めにかけて、ハンガリー国内の三つの都市で行われました。作曲者自身がタクトを執りましたが、中でも公式な世界初演とされているのは、2001年3月31日にブダペストで行われた演奏会です。

日本においては、同年6月5日に大阪市のザ・シンフォニーホールにて初演が行われました。この時の演奏は大阪市音楽団が担当し、指揮は秋山和慶氏が務めました。

楽章構成

この交響曲は、ハンガリー史における著名な王たちの名を冠した三つの楽章から構成されています。各楽章の内容と演奏時間は以下の通りです。

第1楽章「アッティラ!」

約13分6秒。5世紀のフン族の指導者、アッティラの攻撃的かつ残忍な一面を描写します。兄ブレダの英雄的な主題や、妻リカの叙情的な主題も現れます。ピアノの内部奏法や木管楽器のキーが鳴る音、人間の叫び声といった特殊な音響効果も用いられ、不気味さや激しい侵攻の様子が表現されています。

第2楽章「アールパード」

約10分44秒。ハンガリー建国の祖であり、民族的英雄として称えられるアールパード公を主題とし、穏やかで高貴な雰囲気に満たされています。

第3楽章「イシュトヴァーン」

約14分40秒と最も長い楽章です。カトリックに改宗し、初代国王となったイシュトヴァーン1世（聖イシュトヴァーン）の治世を描きます。王位を巡る争いの後、ハンガリー国歌の旋律が壮麗に登場し、作品は堂々たる終結を迎えます。

この「シンフォニア・フンガリカ」は、ハンガリーの歴史と偉大な指導者たちに捧げられた、吹奏楽における重要なレパートリーの一つです。

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