シーキャット (ミサイル)

シーキャット個艦防空ミサイル

シーキャット（英語：Sea Cat）は、かつてイギリスで開発・運用された個艦防空ミサイル（PDMS）システムです。第二次世界大戦後、艦艇の近距離対空防御を担っていた機関砲の代替として開発され、世界各国の海軍に広く採用されました。現在、イギリス海軍では後継のシステムに更新されて退役していますが、シーキャット搭載艦を導入した一部の国では引き続き運用されています。

開発経緯

第二次世界大戦終結後、イギリス海軍は艦艇の近距離対空兵器として、戦前から使用していたヴィッカース 2ポンド機関砲に代わり、射撃指揮装置と連動するボフォース 40mm連装機関砲を主力としていました。しかし、より高性能な新型砲への更新計画は、1950年代後半までずれ込む見込みでした。

このような状況の中、1955年に新たな対空兵器として提案されたのが「グリーンライト」個艦防空ミサイルです。これは、1951年の会議での決定を受けて開発が開始されたもので、イギリス陸軍の対戦車ミサイル「マラカ」を基に発展させ、戦車だけでなく接近する航空機なども迎撃することを目的としていました。1958年には最初の試射に成功し、開発は非常に迅速に進みました。この成功を受け、イギリス海軍は計画していた新型機関砲の調達を取りやめ、グリーンライト、後のシーキャット・ミサイルシステムの導入を決定しました。

システムの進化

シーキャット・システムは、その運用期間を通じて複数のバージョンに改良されました。

GWS-20:
1962年に就役した最初のシステムです。既存の機関砲用射撃指揮装置であるSTD方位盤を使用し、誘導方式はMCLOS（手動指令照準線一致誘導）を採用していました。これは、オペレーターがミサイル尾部の発光体を目視し、ジョイスティックで操作して目標へ誘導する方式です。しかし、就役時には既に航空機の高速化に対応しきれない性能でした。

GWS-21:
射撃指揮装置を262型レーダーを備えたCRBF（近距離用盲目射撃装置）に更新し、悪天候下や夜間でも目標を探知できるようになりました。これにより盲目射撃に対応しましたが、ミサイルの誘導は引き続き基本的に手動操作で行われ、目視による誘導も併用可能でした。

GWS-22:
射撃指揮装置を903型レーダーを備えたMRS-3に換装し、システムの自動化が進みました。このバージョンでは、より自動化されたACLOS（自動指令照準線一致誘導）方式が導入されました。MRS-3はアメリカ海軍のMk.56射撃指揮装置に匹敵する性能を持つとされています。オランダ海軍のフリゲート艦向けには、同国製のM45火器管制レーダーを組み合わせた派生型も存在し、これはインドにも輸出されました。

GWS-24:
イギリス海軍におけるシーキャット・システムの最終発展型です。射撃指揮機能がWSA武器管制システムに統合され、イタリア製のRTN-10X火器管制レーダーが連接されました。このバージョン以降、イギリス海軍の新型艦艇や改修艦艇には、後継となるシーウルフ個艦防空ミサイルが搭載されるようになりました。

派生型：タイガーキャット

シーキャットには、陸上配備型である「タイガーキャット」も存在します。これは、3連装の発射機と火器管制装置をそれぞれトレーラーに搭載した移動式のシステムです。誘導方式は初期のGWS-20と同様の手動操作でした。イギリス空軍の高射部隊などに採用されたほか、アルゼンチン、イラン、南アフリカなど海外にも輸出されました。特にアルゼンチン軍は、1982年のフォークランド紛争でタイガーキャットを実戦投入しています。

実戦での活躍

シーキャット・ミサイルシステムは、特にフォークランド紛争において実戦を経験しました。この紛争において、シーキャットはアルゼンチン軍機を8機撃墜したと記録されています。

シーキャットは、機関砲からミサイルへと進化する過渡期の個艦防空システムとして、多くの国で運用され、一部では現在もその役割を担っています。その後の発展型システムが登場するまでの間、艦艇の重要な自己防衛手段の一つとして機能しました。

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