シーク (ペトラ)

シーク：ペトラへの神秘的な入口

シーク（アラビア語: السيق al-Siq, 英語: the shaft）は、ヨルダン南部に位置する古代都市ペトラへの主要な入口です。その名前が示すように、細長く薄暗い峡谷は、まるで秘密の通路のようにペトラの奥へと続いています。場所によっては幅が3メートルにも満たないこの狭い道は、約1.2キロメートル（3/4マイル）の距離をうねりながら続き、最終的にはペトラで最も壮麗な建造物の一つであるエル・カズネ（宝物殿）へと人々を導きます。

自然と歴史が織りなす造形

シークの形成は、地殻運動と水の浸食という二つの自然の力が深く関わっています。地殻の変動によって生まれた地質の断層が、長年の水の流れによって滑らかに削られ、独特の景観を作り出しました。シークを取り囲む壁は、高さ91メートルから182メートル（300-600フィート）にも達し、その圧倒的なスケールは訪れる人々を魅了します。

ナバテア人の知恵と技術

シークの入口には、1963年と1991年に再建された巨大なダムがあります。このダムは、シークへの水の流れを制御し、ワディ・ムーサの水路を変更するために建設されました。紀元前1世紀から紀元後1世紀初頭にかけて、ナバテア人によって建設されたこのダムは、ワディ・ムーサの洪水を防ぐ役割を果たしていました。現在ではかなり正確に復元されており、当時のナバテア人の高度な技術力を垣間見ることができます。

入口にはまた、かつて記念門の一部であったと思われる遺構が残っています。地震によって1896年に崩壊したアーチの残骸は、デイヴィッド・ロバーツのリトグラフ作品によって、その壮麗な外観を知ることができます。

隊商の道、信仰の道

シークは、ペトラへの重要な隊商路として利用されていました。峡谷の両壁には、ベテル（神聖な石）を含む多くの奉納された窪み（壁龕）が刻まれており、シークがナバテアの人々にとって神聖な場所であったことを示唆しています。1998年には、通路を1.8メートル（6フィート）以上下げるための発掘作業中に、一群の彫像が発見されました。これらの彫像は風化が進んでいますが、2人の商人（もしくは神官）と、それぞれが引く2頭のラクダの姿を今もなお確認することができます。その像は、ほぼ等身の2倍大となる大きさです。

未解明な地下室の謎

シークに沿って存在するいくつかの地下室の用途は、現在も明らかになっていません。墓である可能性は否定されており、考古学者の間では住居として使用されていたという説も支持されていません。有力な説としては、これらの地下室はペトラへの入口を守る見張り役の詰め所として使用されていたと考えられています。

シークは、ペトラの歴史と文化を深く理解するための重要な手がかりとなる場所です。峡谷を歩きながら、古代ナバテア人の息吹を感じてみてください。

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