ジェイソン・アーロン

ジェイソン・アーロン（Jason Aaron）

ジェイソン・アーロン（1973年 - ）は、現代アメリカンコミック界で高い評価を得ている著名なコミックライターです。マーベル・コミックをはじめ、DCコミックス/ヴァーティゴ、イメージ・コミックなど、様々な出版社で数多くの人気シリーズや話題作を手掛けてきました。特に『ソー』や『ウルヴァリン』といったマーベルの看板キャラクターに関する長期シリーズのライターとして知られており、その独特なストーリーテリングとキャラクター描写で多くの読者を魅了しています。

生い立ちと初期の歩み

アーロンはアラバマ州ジャスパーで生を受けました。幼い頃からコミックの脚本家になることを夢見ており、その情熱は母親に支えられました。父親は懐疑的だったものの、母親は彼にコミックを買い与え続け、現在も当時のコレクションの一部を大切にしているといいます。また、映画『フルメタル・ジャケット』の原作小説を執筆したグスタフ・ハスフォードは従兄弟にあたり、アーロンは彼から大きな影響を受けたと語っています。シェルビー郡高等学校を卒業後、アラバマ大学バーミングハム校で英語の学士号（BA）を取得し、物語を紡ぐための基礎を培いました。

キャリアの幕開けとヴァーティゴでの活躍

プロとしてのキャリアは、2001年にマーベル・コミックが開催した才能発掘コンテストで始まりました。彼はこのコンテストでウルヴァリンを題材とした8ページのバックアップストーリーを執筆し、見事優勝を果たします。この作品は2002年6月刊行の『ウルヴァリン』第175号に掲載され、これが編集部に自身のアイデアを売り込む足がかりとなりました。

2006年には、DCコミックスの大人向けレーベルであるヴァーティゴから、ベトナム戦争をテーマにした衝撃的なミニシリーズ『ジ・アザー・サイド』を発表します。この作品は評論家から高く評価され、アイズナー賞ミニシリーズ部門にノミネートされるなど、アーロンにとってプロとしての地位を確立する「第二期」のスタートとなりました。ヴァーティゴではこれに続き、アメリカ先住民を題材にしたクライムノワール『スカルプド』をR・M・グエラとのタッグで長期にわたり手掛け、こちらも高い評価を得ました。

マーベルでの躍進

ヴァーティゴでの実績が、マーベル編集部のアクセル・アロンソの目に留まります。2007年末には、マーベルの人気キャラクターである『ウルヴァリン』や『ブラックパンサー』のライターに起用され、さらに『ゴーストライダー』も担当することになりました。2008年には、ヴァーティゴでの『スカルプド』を継続することを条件にマーベルと独占契約を結び、同社での活動を本格化させます。

特にウルヴァリンには深く関わり続け、映画公開に合わせて立ち上げられた『ウルヴァリン: ウェポンX』を担当。その後シリーズはタイトルを改めて継続され、彼の代表作の一つとなりました。また、2011年にリランチされた『インクレディブル・ハルク』や、2012年に開始された『ソー: ゴッド・オブ・サンダー』といった主要キャラクターのリランチシリーズでも脚本を務め、それぞれのキャラクターに新たな命を吹き込みました。『ソー』シリーズでは、女性がソーのハンマーを持つ展開を描き、大きな話題を呼びました。2014年には大型クロスオーバーイベント『オリジナル・シン』のメインライターを務めるなど、マーベルユニバース全体を揺るがす物語も手掛けています。

近年の活動とイメージ・コミック

マーベル以外でも精力的に活動しており、2015年からはディズニー買収後の『スター・ウォーズ』コミックシリーズのメインライターを担当。映画『新たなる希望』と『帝国の逆襲』の間の知られざる物語を描き、こちらもベストセラーとなりました。同時期にイメージ・コミックからは、自身のルーツであるアメリカ南部を舞台にしたクライムストーリー『サザン・バスターズ』を発表。この作品は批評家から絶賛され、2015年のハーベイ賞新シリーズ部門を受賞するなど、アーロンのオリジナル作品としても大きな成功を収めました。R・M・グエラと再び組んだ『ザ・ゴッドダムド』など、イメージでの活動も継続しています。2016年初頭時点では、『マイティ・ソー』や『ドクター・ストレンジ』といったマーベル作品と並行して、イメージでの活動も活発に行っていました。

私生活と評価

アーロンは2000年に映画『X-メン』の公開翌日という象徴的なタイミングで、カンザス州カンザスシティに移住しています。また、南部バプテストとして育ちましたが、現在は無神論者であることを公言しています。

彼の作品は、緻密なプロット、生々しいキャラクター描写、そして時には容赦のない暴力描写などが特徴として挙げられます。アイズナー賞やハーベイ賞といったアメリカンコミックの主要な賞に度々ノミネートされ、『サザン・バスターズ』での受賞歴が示すように、インディペンデント作品とメインストリーム作品の両方でその才能を発揮しています。ジェイソン・アーロンは、現代のアメリカンコミックシーンにおいて、最も影響力があり、多作なライターの一人として確固たる地位を築いています。

もう一度検索