ジェルバ島の戦い

ジェルバ島の戦い：地中海の覇権をかけた激戦

1560年5月、チュニジアのジェルバ島近海で繰り広げられたジェルバ島の戦いは、オスマン帝国とスペイン・教皇領・マルタ騎士団などキリスト教連合軍との間で勃発しました。ピヤル・パシャ率いるオスマン帝国軍が、大規模なキリスト教連合艦隊を打ち破り、地中海におけるオスマン帝国の影響力を強烈に示す結果となりました。

背景：地中海の勢力争い

16世紀の地中海は、オスマン帝国とヨーロッパ勢力との間で激しい覇権争いが繰り広げられていました。1538年のプレヴェザの海戦でのオスマン帝国の勝利、1541年のカール5世によるアルジェ遠征の失敗などを経て、ヨーロッパ諸国はオスマン帝国の脅威をより一層強く感じるようになっていました。1558年には、ピヤル・パシャがバレアレス諸島を襲撃し、スペイン艦隊を攻撃するなど、オスマン帝国の勢力拡大は明らかでした。フェリペ2世は、トリポリ奪還を目指し、ヨーロッパ艦隊の編成を画策します。トリポリはマルタ騎士団領でしたが、1551年にピヤル・パシャが奪取し、スレイマン1世から領有を認められていました。

戦力：キリスト教連合艦隊 vs オスマン帝国艦隊

キリスト教連合艦隊は、50～60隻のガレー船と40～60隻の小型艦艇で構成されていました。艦隊はジェノヴァ、トスカーナ、教皇領、マルタ騎士団などによって構成され、ジャナンドレア・ドーリアによって編成されました。しかし、マルタへの航行中に悪天候と疫病に見舞われ、兵力を大きく消耗しました。

一方、オスマン帝国艦隊は、ピヤル・パシャ率いる86隻のガレー船・ガリオット船で構成され、イスタンブールから出航しました。オスマン艦隊は、キリスト教連合軍が予測していなかったタイミングでジェルバ島に到着しました。

戦闘：オスマン帝国の圧勝

戦闘は数時間で決着し、キリスト教側のガレー船の半数以上が撃沈または拿捕されました。キリスト教側の死傷者は18,000人に達したとする説もありますが、より控えめな見積もりでは9,000人程度とされています。残存兵は、建設されたばかりの要塞に退避しましたが、ピヤル・パシャとチュルガット・レイースによる攻撃を受け、3か月の攻防の末に降伏しました。ピヤル・パシャは、約5,000人の捕虜をイスタンブールに連行しました。

その後への影響：地中海の勢力図の変化

ジェルバ島の戦いでの勝利は、オスマン帝国が地中海の制海権を確立したことを示すものでした。特に、スペイン艦隊が熟練兵を多数失ったことは大きな痛手であり、その後の艦隊再建に時間を要しました。また、この戦いの後、マルタ海峡が無防備状態となり、1565年のマルタ攻囲戦を招きました。しかし、オスマン帝国はマルタ島の奪取には失敗しました。

勝利したオスマン軍は、打ち破ったスペイン守備兵の頭蓋骨で角錐状の塚を築きました。この塚は19世紀後半まで存在し、現在はフーム・スークのボルジュ・エル・ケビールに小さな記念碑が建てられています。

ジェルバ島の戦いは、その後の地中海世界の勢力図を大きく塗り替える、歴史的な出来事となりました。

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