ジス・ソング

ジョージ・ハリスンが1976年11月5日に発表したシングル「ジス・ソング（This Song）」は、アルバム『33 1/3|33 1_3』からの先行リリースとして注目を集めました。日本では、同年12月10日に発売されています。

この楽曲は、ハリスン自身が1970年に発表した大ヒット曲「マイ・スウィート・ロード」の盗作問題、具体的にはブライト・チューンズ社からの著作権侵害訴訟に触れた内容となっています。訴訟の結果、ハリスンは著作権侵害を認めざるを得なくなり、その裁判沙汰に対する彼の複雑な感情が、この「ジス・ソング」には込められています。

特筆すべきは、この曲のプロモーションビデオです。ビデオは、実際の裁判の様子をパロディ化したもので、法廷でのユーモラスなやり取りや、ハリスン自身が扮する被告の姿が描かれています。このパロディを通じて、彼は判決に対する皮肉を表現したと考えられます。

しかし、発表後、ハリスン自身がこの曲に対して複雑な感情を抱くようになったのか、いくつかの点で異例の扱いを受けています。例えば、『ダーク・ホース 1976-1989』といったコンピレーション・アルバムには収録されていません。また、彼の代表曲のほとんどが演奏された日本でのライブにおいても、この曲は演奏されませんでした。さらに、オール・タイム・ベストと銘打たれた『レット・イット・ロール ソングス・オブ・ジョージ・ハリスン』にも収録が見送られています。

「ジス・ソング」は、アメリカの『ビルボード』誌では最高位25位、『キャッシュボックス』誌では最高位28位を記録しましたが、イギリスのチャートではランクインを果たせませんでした。この楽曲は、賛否両論を巻き起こし、ハリスンの音楽キャリアの中でも特異な位置を占める作品と言えるでしょう。

シングルの収録曲は以下の通りです。

1. ジス・ソング - This Song (Edited Version)
2. 愛のてだて - Learning How To Love You

「ジス・ソング」は、ジョージ・ハリスンの音楽性と人間性を深く理解するための重要な作品であり、彼の創造性と葛藤が垣間見える興味深い楽曲です。

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