ジッロ・ポンテコルヴォ

ジッロ・ポンテコルヴォは、1919年11月19日にイタリアで生まれ、2006年10月12日に亡くなった映画監督です。彼は、社会的なテーマを深く掘り下げた作品を多く手掛け、特に『アルジェの戦い』は、その革新的な演出とドキュメンタリーのようなリアリズムで知られています。

裕福なユダヤ人家庭で育ったポンテコルヴォは、ピサ大学で化学の学位を取得後、政治的な活動に関わるようになります。当初は左派の学生グループに属していましたが、反ユダヤ主義の高まりとともにフランスへ逃れ、ジャーナリストとして活動を開始しました。パリでは映画の世界に足を踏み入れ、短編ドキュメンタリーの制作や助監督を経験し、イヴ・アレグレ監督などの下で学びました。この時期には、パブロ・ピカソ、イーゴリ・ストラヴィンスキー、ジャン＝ポール・サルトルなど、多くの著名人と交流を持ち、彼の視野を広げました。

1941年にはイタリア共産党に入党し、第二次世界大戦中はパルチザンとして反ファシスト運動に身を投じました。戦後、映画監督のロベルト・ロッセリーニの作品に触発され、映画制作に専念するようになります。16mmカメラを購入し、自ら資金を調達してドキュメンタリー作品を制作しました。1956年のハンガリー動乱を機に共産党を離党しますが、マルキシズムへの関心は持ち続けました。

1957年、初の長編映画『青い大きな海』を制作。イタリアの漁村を舞台に、不漁にあえぐ漁師たちが密漁に手を染める姿を描き、カルロヴィ・ヴァリ映画祭で賞を受賞しました。ポンテコルヴォは、作品のリアリティを追求するため、長期間にわたるリサーチや、実際の状況を忠実に再現することにこだわりました。

1960年には、ナチスの強制収容所を舞台にした『ゼロ地帯』を発表。収容所でカポとなる少女を描き、アカデミー外国語映画賞にノミネートされました。そして、1966年、彼の代表作となる『アルジェの戦い』を発表。アルジェリア独立戦争を、アルジェリアの民衆の視点から描いたこの作品は、ネオリアリズムの影響を受け、ニュース映像のようなスタイルと、アマチュア俳優の起用が特徴です。この作品は、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、アカデミー賞でも監督賞、脚本賞、外国語映画賞にノミネートされました。

その後も、1969年の『ケマダの戦い』や、1979年の『Operación Ogro』など、社会的なテーマを扱った作品を制作しました。晩年にはヴェネツィア国際映画祭のディレクターを務め、2000年にはピエトロ・ビアンキ賞を受賞しました。2006年、心不全のため86歳で亡くなりました。彼の作品は、現在も映画史に大きな影響を与え続けています。

主な監督作品としては、『青い大きな海』 (1957)、『ゼロ地帯』 (1960)、『アルジェの戦い』 (1966)、『ケマダの戦い』 (1969)、『Operación Ogro』 (1979)などがあります。

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