ジブラルタルの占領 (1704年)

ジブラルタルの占領：スペイン継承戦争における戦略的要衝の奪取

1704年8月1日から4日にかけて、スペイン継承戦争の最中、イングランド・オランダ・オーストリア連合軍は、スペイン南端に位置する港湾都市ジブラルタルを攻撃しました。この戦いは、連合軍がジブラルタルを占領し、その後の歴史においてイギリスの海外領土となる重要な転換点となりました。

戦略的背景

イングランドの戦略は、陸軍をスペイン領ネーデルラントへ派遣し、海軍を地中海へ展開することで、フランス・スペイン連合軍を牽制することでした。しかし、1702年のカディス攻略戦の失敗により、地中海の拠点を確保することが急務となりました。

そこでイングランドは、ポルトガル王国との間にメシュエン条約を締結し、リスボンをイングランド海軍の寄港地としました。さらに、オーストリアのカール大公を招き入れ、地中海進出の補給拠点とスペイン王位請求の大義名分を獲得しました。1704年5月、ジョージ・ルークを司令官とするイングランド・オランダ艦隊が地中海へ派遣されました。

ジブラルタル占領の経緯

当初、連合艦隊はバルセロナとニースの陥落を目指しましたが、いずれも失敗に終わりました。トゥーロンへ進軍中のフランス艦隊との遭遇を避けたルークは、西へ引き返し、ジブラルタル海峡を越えてラゴスに停泊しました。

ポルトガル王とカール大公からカディス攻略の提案がありましたが、ルークはこれを却下し、ジブラルタル奪取を決意しました。ジブラルタルは、海峡の北端に位置する半島であり、守備が容易な地形でした。ゲオルク・フォン・ヘッセン＝ダルムシュタット率いる陸軍が上陸してスペイン本土とジブラルタルを繋ぐ北部を遮断し、海軍がジブラルタルの要塞を砲撃するという二方向からの挟み撃ち作戦が実行されました。

8月1日、ジョージ・ビング率いる連合艦隊がジブラルタル湾に侵入し、西側を包囲しました。陸軍も上陸し、北からジブラルタルへ進軍しました。要塞側と連合艦隊は砲撃を繰り返した後、新モール側に上陸した海軍が降伏を勧告し、ゲオルクもジブラルタル北端に到達して同様に勧告したため、スペイン軍は降伏し、ジブラルタルは連合軍の手に落ちました。

戦後と現在

戦後、ジブラルタルはカール大公が領有することになりましたが、1713年のユトレヒト条約でイングランド領となり、地中海におけるイギリス海軍の重要な補給基地となりました。フランス・スペイン連合軍はジブラルタル奪還を試みましたが、マラガの海戦での敗北や陸軍の包囲の失敗により、その試みは阻止されました。現在、ジブラルタルはイギリスの海外領土として存続しています。

まとめ

ジブラルタルの占領は、スペイン継承戦争における重要な出来事であり、その後の地中海の勢力図を大きく変えることになりました。戦略的要衝であるジブラルタルを確保したイギリスは、地中海における影響力を拡大し、大英帝国の繁栄へと繋げていったのです。

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